ブログ - 20130909のエントリ

蚊に愛される男

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2013-9-9 0:09

 五日前のことでした。その日は岡垣町議会の傍聴に行く日で、O君が家の門扉の前まで車で迎えに来てくれました。

 助手席のドアを開けて乗り込もうとすると、わたしに付いて来た蚊がいっしょに車の中に入ってきたのです。

 (ああ)と言って、手を振って追い出そうとしたのですが、どこかに隠れてしまいました。

 (蚊っていう奴は本当にしつこい奴だな!)

 わたしはいらだたしく言いました。

 (そんなに苛立つものじゃないよ)

 とO君は言うのです。

 彼自信も苛立つことが多いのにです。

 わたしが黙っていると、

 (良いほうに解釈することも出来るのですよ。自分の血は蚊に吸ってもらえるほど価値があるって)

 彼はハンドルを握って車を発進させながら言い、(ほう?おれが時々言う箴言みたいなことを言うな、生意気に)とわたしは考え、(それはそうだな。歳をとって心臓の手術までして、一日に10錠もの薬を飲んでるおれの体はまだ吸う価値があるんだな)と言いました。

 O君は黙ったまま、うなずいていました。

 午前中の議会の傍聴を終えると、彼の車に乗ってもどって来ました。

 彼に礼を言って、自分の部屋の引き戸を開けました。

 すると、(お帰りなさい)と言うように、部屋の中で待っていた蚊がわたしに寄って来ました。まるで妻みたいです。

 蚊取り線香に火をつけながら、彼の言葉を思い出しました。

 (蚊に愛される男)

 浴室でシャワーにかかり、何箇所かに刺された痛みを覚えました。

 タオルで体を拭いていると、肘と膝の裏側を二箇所、刺されていました。

 

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