ブログ - 20151214のエントリ
部屋の中は暖かかった。天井からは桃色、銀色、金色、緑、青色のツリーが垂れ、舞台の上に伸びていた。舞台の上の壁にはサンタクロースをくりぬいた絵が貼られ、彼は白い袋を担いでいた。プレゼントが詰まっているのだった。星が金色と形をなして、参加者たちの頭上に降りていた。
彼らはテーブルの上に置かれた菓子を食べ、お茶を飲んでいた。周りの仲間たちとおしゃべりをし、仲間たちを見回し、頭を下げたりしていた。障害者のクリスマス会の催しであった。
小さな舞台に二人の老婦人が笑顔で立っていた。一人が話しをし、もう一人が紙芝居の絵をめくり、芝居が始まった。
「このコートはとても暖かくて、体を温めてくれます」
老婦人の一人が言い、赤いコートの絵が出てきた。それは参加者たちの方に向いていて、きちんと畳まれ、襟が少し開いていた。
「ところが何年も使ってるうちに擦り切れてしまいました。さて、どうしたら良いのでしょうか?」
彼女は四十人ほどの参加者たちを見て言ったが、誰も答えることが出来なかった。参加者たちには町長、町会議員、町役場の職員、福祉団体の関係者がいた。
「切ったり縫ったりして、ジャケットに変えたのです」
赤いジャケットの絵が出されました。
「ところが何年も使ってるうちにまた擦り切れてしまいました。さて、どうしたら良いのでしょうか?」
彼女の向けた顔に皆考えたが、答えは出なかった。
「チョッキにしたのです」
チョッキの絵が出ました。
「チョッキも擦り切れたしまいました。さて、どうしたら良いのでしょうか?」
首をかしげたり、笑ったりしながら、誰も答えられなかった。
一人の若い男は顔を天井に向けて笑い、違う世界にいました。一人の若い女は子供じみた笑いを浮かべて、白い歯を見せていて、話の内容がわかってるかどうかわからない感じでした。歌うためのマイクを握らされたのですが、スイッチを入れることも知らず握ったままでした。
わたしはマフラーに仕立て直したのではないかと考えていました。
「帽子にしたのです」
赤い帽子の絵が出ました。
なるほど、とわたしは思いました。
「帽子も擦り切れてしまいました。さて、どうしたら良いのでしょうか?」
誰も答えられません。
「蝶ネクタイにしたのです」
蝶ネクタイの絵が出ました。
「蝶ネクタイもぼろぼろに擦り切れました。さて、どうしたのでしょう?」
ここでわたしはまったく予想が出来なくなったのです。
老婦人はしばらく黙った後に言いました。
「このお話を作ったのです」
意味のある沈黙にみんな満足しました。