ブログ - 20200112のエントリ

不思議な正月明け。

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2020-1-12 7:45

  話し相手がいないので、昨日は知り合いの老女の家に行った。前日に、町の通りで出会い、立ち話をし、夜に電話を入れたが出なかった。海老津駅南開発反対運動の時の仲間で、結婚相談所を開いていた人で、おだやかで頭の良い人である。

 ピンポンを押すと、カーテンを開けてわたしを見、家にあげてくれた。長話をしてると、彼女の女友達から三度も電話がかかって来て、最後の電話は一緒に昼ご飯を食べようという話になったので、わたしは辞して帰った。ただ、彼女の口から、主人は亡くなった、息子が早稲田を出て、孫は慶応を出た、田中君は母を連れて私の通う介護施設に来るが母親はいつもパジャマ姿なんよ、とと言う話が、前日もそうであったが、三度も出て、この人は頭の老化が始まり、わたしは自分も物忘れが時々、起きることを思い返した。

 もう一軒、障害者の会の仲間の家に寄った。たった今、あんたの家に行ったけど、おらんかった、と言い、玄関口で長い世間話になった。彼は庭仕事を長年やってきたが、脊髄狭窄症にかかり、脚が痛んで仕事が出来なくなり、生活が苦しい、と言いながら、金を稼ぐためにボートレースやパチンコにいくが損をするという。

 彼と別れ、町の閑散としたシャッター通りをバイクでゆっくり走っていると、向かいから少し変な老女が歩いて来た。骨ばった男みたいな顔つきであり、手ぶらで、古びた赤いセーターが変に不似合いであった。首筋からは冷たい風が入りようであったが、寒そうではなかった。何も持っておらず、ホームレスの印象があった。

 「すみません。のせてくれませんか?」

 といきなり言うので、おどろき、

 「このバイクに乗るんですか?後ろにボックスを付けてるから乗れませんよ」

 と言うと、

 「一つお尋ねしますが、海老津駅はどう行ったらいいんですか?」とたずね、

 「あそこの交差点を右に曲がって上って行けばすぐですよ」とこたえると、そちらの方に行ったが、金は持っているのだろうか?どこからやってきたのか?と、心配になった。

 いったん家に帰り、昼食をとり、さてなにをしようか?と考えて、いつもの山道を歩くことにした。

 一時間はかかるコースで誰とも出会わない山中である。膝が痛み始め、だいじょうぶか?と思いながら、ここで倒れたら野垂れ死にだ、と考えた。池に着いて休み、帰りは三度休んで、やっと団地の家の家並が見えて来た。

 「こんにちわ!おいちゃん!」

 向かいから全く知らない老女が声を掛けて来た。

 「こんにちわ!」

 と挨拶を返すと、前から知り合いみたいな口調でしゃべり始めた。

身も心も軽々としたあっけらかんとした感じがした。洗いざらしの綿パンと着古しセーターを着ていた。

 わたしがいくつに見えるか?と訊くと、以前もそんなことがあったが八十歳くらいと言い、ショックをうけていると、彼女が八十歳でわたしは年下なのであった。役場の傍の家に住んでるけど山が懐かしくなってここに来たと言った。英彦山のそばの添田町の生まれだと言い、近所の人としゃべると人の悪口ばかりだから嫌になると言った。

 今年は、暖かい冬である。毎年気温は三度くらいに下がるのであるが、今年は毎日十度以上である。その暖冬のように、老女は身も心もさわやかで軽々した雰囲気であった。

 彼女添田町にある雪舟庭園の話を始め、雪舟は生き倒れになってるところを救われ、お礼に庭園を造ったと言い、自分は柳川の生まれだと言った。先ほどは添田町と言ったはずだと私は考えた。わたしが柳川の古賀政男や北原白秋の話をすると、あの人も生き倒れになってたところを助けられた、と言い、この町の聞いたた事もない町会議員の名前を持ち出したり、彼女の家はわたしが戻って来た戸切にあると話が変わったりして、どうもこの人も頭が少しおかしい、と考えた。

 彼女は山奥までは行かずに、迂回して町の通りに戻ると言って、別れた。

 でももしかすると、わたしが生き倒れになることを恐れた山奥に向かったのではないか?と考えると、作品の展開が始まるようであった。小説の中の物語だと考えると、何かわからないけど、感じ取れるような気がする。正月明けの今年の予感が映ってるようにも思える。

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