ブログ - 20140322のエントリ
知人たちと老人介護施設の開設の話があり、参加した。元気の良い老人たちが6人集まり、話に花を咲かせた。
雑談になり、インド旅行をしてきたと言う70過ぎた夫人が話を始めました。
「観光バスに乗って町中を見ていると、インドの人はみんなこっちを向いて手を振ってくれてね」
その言葉に座卓を囲んだ者たちは興味を示した。
「みんな笑い、顔が生き生きとしてるのよ」
「この町を散歩していても笑ってる人なんて見かけることないわよね」
「そうねえ」
「汚れた服装の人ばかりで、道路は信号もないのよ。車やバイクがあふれ、バイクには5,6人がのっているのよ。歩行者が道を渡るときは車を避けながらすごいスピードで走らなければならないのよ」
「まあ、恐い」
「ガンジス川にも行ったわ」
「どうだった?」
「あそこは聖なる川でインド人が体を洗うことは知ってるよね」
「知ってるわ」
「でもそこには死体も流れてくるのよ」
「えー?」
「河口で死体を焼いて灰を川に流してるんだけど、埋葬料を半額しか出せなければ半分だけ焼いて後は川に流すからよ」
「半分の死体を?」
「そうよ」
「わー、信じられない」「その水を飲んだり、顔を洗ったりするのよね」
「そうよ。ゆるく長い階段のところに行ったら、両端にみんな座っているのよ」
まわりの者たちは耳をそばだてた。
「わたしたちが階段を上っていくとみんな手を伸ばして金をくれ、って言うのよ。幼い女が赤ん坊を抱いて手を伸ばしてきたから良く見ると、彼女の子供だったのよ」
「どういうこと?」
「早熟だから子供の時にセックスをするからよ」
「ふーん」
「そしたらね。抱かれた赤ん坊もわたしに向かって手を伸ばしてるお金をくれ、って言ってるのよ」
「まあ、可愛い」
「栄養不足だからお猿さんの赤ん坊みたいだった。わたしが100ルピーを出すと受け取ったんだけど懐にしまって、また手を出すのよ。それじゃ足りない、って言ってね」
「赤ん坊も手を出した?」
「それは憶えてないけど、男がそばに立っていて女の人を棒で叩き始めたのよ」
「えー、どうして」
「よくわからなかったけど」
「警察官?」
「そんな服装じゃなかった」
「物乞いをするな!っていうことじゃない」
「男が叩きつづけるから女の人も赤ん坊も泣きながら逃げて行ったわ」
「わー、悲惨!」
「わたしは呆然としていた。あの親子はどうなるのかと心配し、もう100ルピーやるべきだったと考えたけどどこに行ったかわからないし、また階段を上り始めたの」
「そしたら?」
「両手と両脚のない男の人が何人か物乞いをしていてびっくりした」
「どうして、手足がないの?戦争の被害者なの?」
「ちがうのよ。後で聞いたんだけど人の同情を引くために手足を切り落としたのよ」
沈黙が広がった。。
「日本の戦後、戦争で手足を失った軍人がアコーディオンを弾きながら街角に立っていたけど」
中の高齢者が言った。
「傷痍軍人、っていうのよね」
その言葉を知らない者もいた。
「今度つくる介護施設は夕食も老人の人たちに出そうと考えてるのよ。うちで作った有機野菜でね」
「それは良い。私達も食べに行っていいのかしら?」
「もちろん」
「どんな料理が出るか楽しみだわ」
「あなた、またインドに行ってみたい?」
「行ってみたい」