ブログ - 20210102のエントリ
おれは、ここに、いるのに、おまえは、いない。
心の中にいても、それは仮象でしかない。
今のおれは、あの時の、ままだが、おまえは大阪の実家に戻ったまま、それからどうなったかわからない。おまえは何度かおれの家の電話に声を届けたのだが、おれは仕事でいなかった。ツマが、電話でおまえと会ったが、おまえを歓迎するはずはなく、ぎゃくにおれとおまえとの出来事、その成り行き、それにおれの欠点を執拗に探し、聞き出そうとしたにちがいない。
それは、もう、四十年前のことになる。
この寒々とした一月一日、それは四十年前、おまえが三度も家出して、波津の海で身投げ自殺をはかろうとしたあの時期の寒さを思い起こさせる。十二月、一月、二月と三度も重なり、狂気の沙汰だと、交際相手の弟は言った。
それから世間ではあいかわらず、いろんな事件や出来事が起こったが、おれのおまえに対する気持ちはあの時のままだ。それは手あかのついた言葉ではあらわせないし、あらわそうとすれば自分の心に浮かぶ音楽でしかない。時につぶやくように唇に伝うことはあるが、曲にしようとすれば消えてしまう。
今、これを打っているパソコンの上、そのプリンターの陰に封をしていない白封筒がかくれている。一年前から投函されそうにない。おれがそれを握り、郵便ポストに行くときは、紙爆弾をかかえた決心がいるにちがいない。実家宛ての手紙で、おまえの近況を問うだけの文であるが、お前の父や母、弟などの目にふれれば、まちがいなく悪夢を呼び起こし、もしかすると破裂させるかもしれない。
ポストに入れないまま、プリンターのそばで、一年がたった。
早くしなければ、おれの余命はリミットに近づくだけだ。