ブログ - 20141029のエントリ
一週間前、部屋に戻ると不思議な光景に気づいた。女郎雲が肘掛座椅子のそばに巣を張り、わたしを迎えてくれたのである。わたしの屋敷は広いので蚊が多く、部屋には網戸を張っているのだが、出入りするたびにたくさんの蚊がわたしを追いかけてきて部屋の中に入り、結局は住み込んでしまうのもいる。布団の中で寝入る時間になると忍び寄り、食事(血を吸う)をする。
それを知って蜘蛛は巣を張ったのだ。その研究心に脱帽したい。
部屋の隅っこに蜘蛛が巣を張るのは珍しくないが、部屋の真ん中ほどしかもわたしがいつも体を横たえる位置に住みかを構え生活をするとは?と、おどろいた。肘掛座椅子は20年近くも愛用しているもので、体を休めたり、本を読んだり、テレビをみたり、考え事をしたりして、わたしの生活の中心的存在である。それを知っての上の作戦だ。
女郎蜘蛛は小さかったので子供かと考えていたら、オスであった。メスの三分の一くらいの大きさしかなく、体も模様もすごく貧弱であった。糸の張り方に興味があって、最初の縦糸、横糸はどうやって張るのか疑問であった。ネットで調べてみると横糸は風に流されと時に引っ張っていき張る、と書いてあったが、それだと風の無いところでは張れないということになる。暑い時などは網戸を閉めているだけなので風は入りやすい。
2,3日、巣の様子を見たが、獲物は一匹もかかっていなかった。女郎蜘蛛は網の端っこでじっとしてるだけでわたしを見ることもないし、置物の一つみたいなものであった。
わたしは蜘蛛のことも忘れかけていた。ある日、蜘蛛の姿が忽然と消えていた。網の跡も一本も残っていなかった。蜘蛛がいなかった状態に戻った。網はどうしたのだろう?と考えていると思いついた。糸を自分で食べて腹の中に戻し、たぶん一時間はかかったであろうが、新しい生活拠点に行った。そこでまた口から吐き出して網を張っていくのである。
なんとも言えない生物の本能である。人間以上に研究熱心でつつましく、生活を大事にしている。一寸の虫にも五分の魂、とはよく言ったものだ。
そうだ!とわたしは思い返した。あの日、蚊が執拗にわたしを襲ってくるので蚊取り線香をたいたことがあった。それを嫌がって蜘蛛は出て行ったのだ。蜘蛛に悪いことをしたと思った。