ブログ - 20210610のエントリ

緑豊かな家

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2021-6-10 6:09

  畑仕事が一段落する、といっても終わることはないのであるが、椅子に座って、酒を飲む。まわりには緑豊かな景色が広がり、わたしを包んでいる。背中には田植えを終えた田んぼがあり、右手には色づいたビワが見え、つぎに梅の木が茂り、そしてアジサイが五つの花壇で花を咲かせ、日本庭園ではしだれ梅が枝を剪定されて垂れている。

 ピーナツを嚙みながら、酎ハイを飲む。

 目の前で、二十株のスイカが花を咲かせ、四方につるを這わせていている。接ぎ木のものは根元からカボチャの葉が出ていて、まさかスイカとカボチャができるのではないか?と思ってしまう。そばの線路で電車が走る。緑豊かな家にお住まいですね!都会から来た男が昔言ったが、まさにそのとおりである。彼は三十年前にガンで死んでしまった。わたしより若かったのに、残るはずだった人生から見捨てられた、気の毒に。わたしだって、あと十年の命であろう。

 ミニ・トマトが赤らみ、口に入れてみると香ばしかったし、ナスもピーマンも大根もニンニク、キュウリも草の中から顔を出し始めているが、いつまでたっても草むしりは終わりそうにない。草刈り機で刈れば早いのであるが、それらと草の混じった状態では使えず、鎌でていねいに刈っていくしかない。

 数十種類の草が隙間なく畑地を埋めていて、それらを刈り取ったとしても三週間後にはみごとに元どおりになっているのである。自分の命が尽きるまで刈り取らなければならず、まわりに茂る木の枝も切り落とさねば隣地から苦情が出るはずである。

 もう疲れたよ!

 鎌を投げ出して、地面に寝転がり、空を見上げる。コロナも静かになって、また、前の時代が戻って来そうである。人間業から解放されるか?と考えていたが、そうではなさそうである。

 顔のそばで、草がささやいている。

 僕たちだって、生きる権利があるんだよ。

ログイン
ユーザー名:

パスワード:


パスワード紛失

ブログ カレンダー
« « 2021 6月 » »
30 31 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 1 2 3
アクセスカウンター
2024/05/04:10/10
2024/05/03:169/241

2024/04/04より2057/6691