ブログ - 20200627のエントリ

非接触システム。

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2020-6-27 8:09

  こんな老夫婦がいる。二人とも買い物以外は、ほぼ引きこもり生活で、二十年間ほど、非接触システムの中で生きている。会話はしないし、まちがって家の中で出くわしても、相手の顔を見ることはなく、そらし、去る。買い物に出る時、ツマは彼女の部屋の外鍵をかけ、戻ると内鍵をかける。夫は無施錠であるのでツマは侵入し、手紙や日記を盗み読みする。通帳はツマが握り、夫は食材の領収書を食堂間のテーブルの上に置いておく。数分後に、現金に替えられている。食事は時間帯を変えて、たがいに自炊をし、夫は食堂間で、ツマは彼女の部屋で食べる。

 入浴をするとき、ツマはオットに見られないように裏庭から回ってこっそり入り、電灯は点けない。終わると、裏庭を通って自室にもどる。そんな生活に耐えられず、オットが苛立って怒鳴り付けると、DVだと言って、警察を呼ぶ。

 少し前まで、彼は協議離婚を考えていたが、年老いて面倒になってしまった。夫はツマが男を作って出ていくことを願っていたが、その気配は遠ざかるばかりである。すでに何十年間も相手の顔を見ていない。

 こんな状態で二十年間も同居しているなんて信じられないが、現実の一場面なのである。コロナ禍において、社会に非接触システムが出来てしまったが、この夫婦はそれを予感したように、また、時代を象徴するかのように実行していたのである。二十年前までは二人とも、濃厚接触が大好きで、そのあげくの苦しみで、濃厚接触からも離れたのである。

 このモデルは小説にとって好材料であるが、途中までは書けてもそこから先は進まない。小説を書くことは料理を作ることに似ているが、この場合はドキュメントにはなっても小説にはなりにくい。材料負け、してしまうのである。材料のアクが強すぎて、それを消すには味付け・香料が必要になってくる。香料を出せるかどうか?それが才能なのであるが、わたしにはない。

 

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