ブログ - 20250805のエントリ
産まれて以来、生えた歯は一本も抜けていなかったが、一週間前から奥歯がぐらぐらしていることに気づいた。舌で撫でてみると土台を失っていることがわかり、抜けることが分かった。出血するかそのまま落ちるか?と不安であったが歯医者は怖くてなにをされるかわからないので行かなかった。すると、昨日、何の痛みもなく自然に落ちたのである。手に取って、歯垢に汚れた歯を見つめながら、七十八才だと分かった。歯について深く考えたことは無く、食べ物を噛んでくれるのは当然だと考えていたが、七十八年、片時も自分から離れず、食べ、飲み、時には女とキスをして支えてくれたのである。
抜けた歯は遺骨みたいなもので、幼いころは、それを屋根の上に投げ置いておけばまた生える、などと幼友達としゃべったことがあった。
金が消え、女が消え、思い出が消え、人の名前が消え、知識が消え、すべてが消え去っていく。これが末期というものであるが、きれいさっぱりと消えてしまうことは無心になって良いことである。