ブログ - 20250513のエントリ
亡くなった者を美化しているといわれるだろうが、そうであろう・・・。母は二十年前に亡くなっている。近ごろ、思い出して、想いに耽ることが多くなった。若いころは彼女が鬱陶しく、嫌いであった。恩着せがましく、自分が望みもしないことに世話を焼いて、うるさかった。父はロマンチストで酒と女を愛し、家庭を顧みなかったし、子供たちに愛情らしいものを見せたことがなかった。途方もない額の借金を作り女のために使い、母はその返済のために金を借り、働いたのであった。百姓をし、呉服屋で働き、子供の世話をした。日に三時間しか眠らなかった。息子二人を東京の私立大学にやったが、二人とも良い人生は送らなかった。
あれこれ思い出して、気づいたことは、彼女が一度も涙を見せたことがなかったということである。退職して野菜作りを始めて気づいたことはたくさんあり、その中の一つは花の美しさを知ったことである。母の植えた花がたくさん咲き始めている。バラ、菖蒲、水仙、シャクヤクなど、限りなく咲いている。まわりの草をむしってやると、花は美しくなっていくのがわかる。
それが母のイメージに重なってくる。思い出してみると、彼女は想像もできない苦しい人生の中で、一度も涙を見せず、美人で、女優のように美しかった。