ブログ - 20211010のエントリ
町の仕事で、高齢者への弁当配りをはじめておよそ一年になるが、彼らの実生活に触れることができるし、自分の立ってる場所も見えてくる。およそ16軒を一時間半で回っている。運転手の行く先に従って回るので楽だし、気軽である。
配食先の老人たちとも顔なじみになり、毎週、顔を合わせている。昨日の未亡人は、いつも別れ際に、玄関に立って、いつまでも手をふってくれるきれいな人である。ただ、お金(300円)を出すときに手提げ袋をかきまわして財布を探し出し、その中から小銭入れを取り出し、百円玉がないので十円玉ですいませんと言って、出してくれる。女の人の服には大きなポケットがないので面倒だな、と考えたりしたが、昨日は家にどろぼうがいつも入ってお金がないのよ、と言って、十円玉をたくさん出し始めた。家の向かいに住んでいる老婆が服や靴や金をいつも盗んでいく、と言い、妄想ではないか?とかんがえながら、一人住まいの寂しさを考えた。次はいつも玄関先にベンツを停めている主人が、ご苦労さまです、と何度も言いながら百円玉を三枚、出した。高齢の妻の食事を作るのが面倒で、本人はベンツに乗って美味しいものを食べているようである。次は主人が奥の部屋で寝ているので、お弁当です!上がります、大声を出して、中に入り、玄関そばの部屋においてある三百円を手に取り、弁当を置いて、家を出た。次は配達先が変わっていて、いつもの老人は入院していたが、前回、おれは病院に入るのは大嫌いだ!と言いながら、歩けず玄関先で尻もちをついていた。それからどうなったかわからない。最後は、遠く離れた農家の老婆で、耳が聴こえないので、声をかけながら上がり、部屋の中を探して、食堂間にいるのを発見して、変えをかけ、弁当を食卓の上に置こうとすると、冷蔵庫を指差した。耳を近づけると、保冷剤を上に乗せてくれ、と言っているのがわかり、そのとおりにした。この人の様子を見てくれ、と職員に言われていたので、そのことを報告したが、そのうち、自分にその順番がまわってくることを知り、何年先までこの人と出会えるか?と考えたりした。