ブログ - 20200910のエントリ
昨日は、台風十号で倒されていたアイコちゃんの体を立て直してやった。支えが悪く、そのうえ、茎を十本も植えていたので苦労した。やはりトマトは、強い竹でやぐらを組むべきであった。一本に百個以上の子どもたちを産んでくれたので、売れた金で私の命を支えてくれた、と感謝し、伸び放題であった髪をかってあげた。だいぶ、すっきりしたが,それでも脇芽をきちんと手入れしなかったことを反省した。
そんな作業をしながら、じつはお前を今朝、嫁に出す決心をしていたのだ。九個の姉妹たちが嫁ぎ、お前だけを残していたのは、カラスにおまえを供えに出し、畑地に種をばらまかせて、来年、芽をださせることを考えていたのであったが、カラスたちは大声をあげるだけでお前を見つけず、飛び回っていた。
栗四パック、アイコちゃん二パック、シソを七袋包み終えると、また、畑に出て、お前の首を切ったのであった。畑地で、腐れたままになるお前を見るにしのびなかったのだ。お前の体は大きくならず、中くらいで顔も綺麗な丸顔ではなく、少し不格好であった。が、さもしいおれは値段を踏もうとしていた。七百円、と決め、たらいの水に入れて体を洗い、すべすべした肌と別れを惜しんだ。タオルケットに包み、拭いてやった。
厚地の手提げ袋にお前を入れ、片手に抱いて、バイクの箱に入れる時、おれはふと、思い返して、お前をまた出してやった。畑を見納めにさせようと、おまえの顔をスイカ畑に向けた。そばで向日葵の葉にとまったアゲハチョウが羽を閉じたり開いたりして、おまえを見送ろうとし、コオロギたちがそぞろに鳴いて、別れを惜しんでいた。
もうお前はこの畑に帰ってくることはないだろう、見納めだ・・。
夜明けの空に向かってバイクは走った。後部席のおまえの体は大丈夫か?と、心配になったが、バイクは俺の助手のように毎日働いてくれる。すでに走行距離は十万キロに近いのに、最近は三年間もパンクせず、俺の生活を支えてくれる家族の一員だ。
北九州に向かう国道三号線は、工場に荷物を運ぶ大型トラックが多い。その風圧で橋の欄干に押しやられようとして、体を踏ん張った。路面が荒くてバイクは揺れ、自分の加齢が加わって倒れるのではないか?といつも不安になる。出荷先のスーパーマーケットまで十キロはある。
丸いままのスイカはほとんで店頭になく、カットのものでも四百円で売っている。棚の上におまえをのせて、六百円にしようか?迷いながら、七百円の荷札をはって、店を出た。十二時には結果がメールでくるはずだ。
正午に、売れた、というメールが入った。
今頃は子供たちに囲まれ、おいしく食べられているだろう・・。
せめて、体にしめ縄でも巻いてやれば良かったのに・・。