ブログ - 20160523のエントリ

哀れみは恋愛に近い。

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2016-5-23 7:21

 K子は一戸建ての家に住んでいたが、三十歳すぎの次男が暴力を振るうので安アパート越してきた。彼は私立大学を出て、自営業に就いていたが人間関係がうまくいかなかった。国家試験の資格を取って就職する、と言い、7年間も受験勉強をしていた。ストレスがたまり、K子を時々、蹴ったり叩いたりしていた。

 70歳のK子は亭主と死別していた。面倒見が良く、アパート住まいを始めても近所の古老たちにおかずを作って持って行ってあげたり、調理ボランティアをしたり、歌謡教室に通ったりしていた。次男は国家試験に合格し、仕事につき、結婚して家を出ることになった。K子は二ヶ月後に、アパートを引き払い、前の家に戻ることにした。

 アパートの隣室は空家であったが、ある日、孤老の男が越してきた。K子の部屋の戸をノックして開け、今度越してきましたのでよろしく、と挨拶し、入浴券を持っているのでいっしょに行きませんか?と言った。彼女は驚き、部屋には風呂があるので行く必要はありません、と断った。日曜日であったので水道屋が休みで、男の部屋の水道栓が開けられなかったのだ。

 男は身の上話を始めた。妻や子から捨てられ、トラックの中での路上生活を始めた。大工をしていたが、老いて、週に二回しか働けない。、トラックの運転席で寝泊りしたが、畳の上で寝たくなったので貯めてたわずかな金で安アパートに入居した。彼女はその話に聞き入った。

 男は礼を述べて、トラックに乗って出かけると、500円もするイチゴを買ってきて、K子に差し出した。お金がないのだからそんなことはしなくて良い、と言いながら受け取った。男は水道が止まっているので水をくれ、と言い、バケツを借りて入れ、もらって帰った。洋服ケースが必要になったので買いに行くという。K子は来月には戸建ての家に戻るのでタンスはいらないから、男にあげると言い、ソファ・ベットも要らないからあげると言った。男を部屋の中に入れて、二人で運び出した。

 まるで小説の書き出しのような事実であるが、これから二人の関係はどうなるのか?わたしは興味と心配をもっている。深情けの初老女と路上生活をしていた男が隣同士の住まいになったのだ。何かの巡りあわせを思わせる。

 ヨーロッパのことわざに、Pity is akin to love.というのがある。?哀れみは恋愛に近い、ということわざである。

 

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