ブログ - 20160521のエントリ
先日、ステージに立って、歌った。不思議な気分になった。マイクが流す自分の声を耳で確認しながら歌ったわけであるが、自分の声とは違うような声が流れていた。澄み渡った声、と言われる声ではなかった。まさか他人の歌が流れてるはずはない。おかしい!緊張してるのか?と考えてるうちにますます緊張し、喉が狭まり、声が震え始めたのに気づいた。
観客席を見ると暗く、人の姿もまばらで、死んだような静けさしかなかった。その闇にまた恐怖を覚えた。
失敗だ!
自信を持ち、何度も練習した(海の防人ー鳥羽一郎)の歌が台無しになってしまった。楽屋裏の待合室から外に出て公園の空気を吸った。
数日間、知り合いにそのことを話したりした。皆、歌が上手すぎて、150人の歌を聞いて退屈したし、低音が強すぎて心臓に不快感を与え、気分が悪くなった。
ほとんどの人がそんなことを話した。
考え直してみると、音痴だと考えていたある男が上手に歌ったことに気がついた。彼が前回、ステージに立った時、声が弱弱しい上に音階がづれ、わたしに優越感を与えてくれた。そんな人が5、6人はいたのに今回は一人もいなかった。
音響業者が前回と変わっていた。
オート・チューンのシステムが入っていた?と、後にわかった。
上手に聞こえるように機械が音程を操ったのであった。人工音声にちかい歌にアレンジしたのである。人工知能が歌ったのである。虚しくなったが、3、4人は胸にジーンと来る歌い手もいた。しかし、彼らの与える感動も美容整形をされて力が弱かった。
死なない人間、病気をしない人間、悩まない人間、考え込まない人間、いつも笑顔で幸福な人間ばかりになってしまうであろう。それが(新人類)であろう。もう間近である。