ブログ - 20240111のエントリ

閉鎖病棟

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2024-1-11 22:01

  ある身内が閉鎖病棟におよそ四十年間ほど入院していて、正月明けに電話をしてきた。携帯電話は三社とも滞納して引き込むことも出来なくなっているので、公衆電話からかけてくる。カレンダーを持って来て来てくれ、というので、わかった、と答えた。この前は、パンツを五枚買って来てくれと言うので、持って行った。

 彼に対しては、文学的興味以外は関心も薄れていて、何をしゃべっても通じないサイコパスだと考えているので自分にできることがあればしてあげるだけである。病院は車で十分くらいの距離なので、行った。ところが一か月前の建物から変わっていたので、見取り図を見なが探して、訪れた。その建物はふつうのビルだろ考えていたが、受付でカレンダーを持って来た、といっても実物を見ながらサイズや外見を電話で、閉鎖病棟に説明するのである。

 面会も約束の時間を決めて、オンラインでするようになっている。それはコロナが関係しているが、もとよりむずかしい病気なのでトラブルを避けるためであろうことはわかっていた。受付の女から、名刺サイズのカードみたいなものを渡され、操作の仕方を習った。エレベーターののる時もそれを小窓にかざさなければ乗り降りができない。

 二階に上って部屋のインターホンを押すと看護師が現れ、もう一度カレンダーを点検するように見て、OKを出した。どこか違う部屋だな?と思いながら周りを見回すと、わかって来た。部屋の表示板がないと同時に窓がないのである。中は少ししか見えず、患者らしき男が公衆電話で話をしていた。腕が病的に震えていた。

 身内が出て来て姿を現だろう、と考えていたが、現わさないので帰ることにした。エレバーターに乗ってカードを子窓にかざしてみたが反応はなく、手で押しても動かないのである。さきほどの部屋のドアに行って看護師を呼び、彼がかざすとドアは開き、動き始めた。一階に着いて、先ほどの受付を探したが見つからない。おかしいな?と考えながらあちこちのドアの前に立って、探すがわからない。

 もともと方向音痴のうえ、認知症が加わっているのでますますわからない。部屋の窓はなく、たくさんの白いドアと壁、天井に囲まれているだけである。人の姿はない。恐怖がわいた。閉じ込められてしまって、出れなくなっている!出入口が消えているのである。

 二十ほどもある部屋のあちこちを探し回りながら、通りかかった女事務員に聞くと、出入口は目の前にあったのであった。

 閉鎖病棟に、閉じ込められかけたのであった。

 後で、あなたもここに入って生活しなさいと、言われていた気がした。

 そう言えば、階段はなく人の自由な動きは出来なくなっていたのであった。何年か前に行った時には面会も出来たが、すっかり変わってしまった。その前に行った時には部屋に鉄格子がはめられていた。

 この出来事は閲覧者数が多いので、小説にしたいと考えている。

 

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