ブログ - 20191129のエントリ
あることがあって、その精神病院に行った。大部屋のドアは施錠され、(第二病棟)と書かれていた。
ロックが外されて、中に入ると、広い部屋の中に、老人ばかりが、四、五十人ほど、長いテーブルに向かってすわり、小声でおしゃべりをしたり、ぼんやりしたりしていた。老人ホームを訪れたような気になったが、彼らの姿が小学生のように小さく見え、どこか幼さが感じられた。
面会の相手は、となりの間の椅子に背中を見せて座っていた。
婦長が私に、会うように言った。
「一対一で対面させるんですか?この男が過去にどれだけ暴力をふるったか知らないんですか!」
私は言ったが、婦長は取り合わなかった。
男の向かいの椅子に私は座った。
「あんたは・・病院のガラスを割った」
全く身に覚えのないことをその男は言い始めた。
「そんな病院なんてはいったこともない!」
と言って、彼が妄想状態になっていることを知った。
いよいよここまで来たな?と考えていると、
「 ・・洋服掛けが欲しいので買って来て下さい」
と言う。前回、彼は私と口論したことをすっかり忘れているのであった。
「その前に、やることがあるだろう。俺との関係をきちんと整理しろ!」
「そんなに興奮しないでいいじゃない」
彼は薄笑いをしながら、言った。
彼は開放病棟に15年ほどいたが、女患者や男達とトラブルがたえず、ついにその閉鎖病棟に移されたのであった。
男と話はつかず、これまでどおり無視することにした。彼は閉鎖病棟に入っている限り、外に出て、暴力をふるうことは無いであろうが、許可がでれば外出できるという。
私は心臓が震えるほど興奮していたが、椅子に座った老人たちの姿が胸の中に残っていた。徘徊癖やトラブル癖のあるものたちであろうが、この世から離れて生きている彼fらの、その姿が世間に出ることはない。
部屋から出ようとして、ロックされていて出れなかった。一人の老人が立ち上がり、職員を読んで、開錠させてくれた。
彼らは、夕食を前にして、座っていたのであった・・・。
誰からも見放され、(飼育)されている人々を見て、自分の行く末とも重なった・・。