ブログ - 20191129のエントリ

夕食の前。

カテゴリ : 
日記
執筆 : 
nakamura 2019-11-29 7:18

  あることがあって、その精神病院に行った。大部屋のドアは施錠され、(第二病棟)と書かれていた。

 ロックが外されて、中に入ると、広い部屋の中に、老人ばかりが、四、五十人ほど、長いテーブルに向かってすわり、小声でおしゃべりをしたり、ぼんやりしたりしていた。老人ホームを訪れたような気になったが、彼らの姿が小学生のように小さく見え、どこか幼さが感じられた。

 面会の相手は、となりの間の椅子に背中を見せて座っていた。

 婦長が私に、会うように言った。

 「一対一で対面させるんですか?この男が過去にどれだけ暴力をふるったか知らないんですか!」

 私は言ったが、婦長は取り合わなかった。

 男の向かいの椅子に私は座った。

 「あんたは・・病院のガラスを割った」

 全く身に覚えのないことをその男は言い始めた。

 「そんな病院なんてはいったこともない!」

 と言って、彼が妄想状態になっていることを知った。

 いよいよここまで来たな?と考えていると、

 「 ・・洋服掛けが欲しいので買って来て下さい」

 と言う。前回、彼は私と口論したことをすっかり忘れているのであった。

 「その前に、やることがあるだろう。俺との関係をきちんと整理しろ!」

 「そんなに興奮しないでいいじゃない」

 彼は薄笑いをしながら、言った。

 彼は開放病棟に15年ほどいたが、女患者や男達とトラブルがたえず、ついにその閉鎖病棟に移されたのであった。

 男と話はつかず、これまでどおり無視することにした。彼は閉鎖病棟に入っている限り、外に出て、暴力をふるうことは無いであろうが、許可がでれば外出できるという。

 私は心臓が震えるほど興奮していたが、椅子に座った老人たちの姿が胸の中に残っていた。徘徊癖やトラブル癖のあるものたちであろうが、この世から離れて生きている彼fらの、その姿が世間に出ることはない。

 部屋から出ようとして、ロックされていて出れなかった。一人の老人が立ち上がり、職員を読んで、開錠させてくれた。

 彼らは、夕食を前にして、座っていたのであった・・・。

 誰からも見放され、(飼育)されている人々を見て、自分の行く末とも重なった・・。

 

 

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