ブログ - 20230209のエントリ
十年前に、心臓のバイパス手術をしたせいで、毎月、病院に通って血液サラサラの薬をもらっている。一人の看護婦はこの町育ちで、あっけらかんとしていて、どこか面白い。ときどきふざけて私の肩を叩いたりするので、誘いの言葉をかけたことがあったが、まさか?冗談やろう?と軽くいなされてしまった。
ところが先月、彼女から採血してもらい、血糖値と血液の濃淡を調べてもらう時、すごく雰囲気が変わっているのに気づき、どうしたん?と聞いたが答えず、顔を横に向けたままであった。毎日、寒いけ、気を付けないけんよ。脳梗塞やら心筋梗塞は怖いよ・・、と言いたげな気の配りようであったが、どこかしおらしくいじらしさを感じてしまった。これまで見せたことのない雰囲気であった。先月、診察が終わって、金を払う時、二十分近くも待たされたことに事務員にクレームを付けたことで彼女が気を使っているのかとも考えた。
ニ三日たっても彼女のことが胸の中に残っていた。
なぜ、そんな気持ちになったのか?もわからなかった。
今、やっとわかるようになった。これまで何人かの女たちと、深い付き合いがあったが、三人ともその時、俗にいう不幸な状態であった。一人はわがままな被害妄想狂で誰からも嫌われ、行くところがなくなって、私の住むアパートに転がり込んできた。二週間ほどいっしょに生活した。そのアパートに子ずれの女が越して来た。離婚したばかりで夫は詐欺事件を起こして刑務所に入っているという。三歳の子は毎朝、目を覚ますと、寒いと言って泣くのであった。ストーブもエアコンもなかった。生活の面倒を看ているうちに夫婦の関係になってしまった。次は、東京生活をひきあげて、帰郷した年、身内の女が自殺をしに来て、私の住む家に住むことになった事であった。この出来事は今、小説に書いているが、三人の女と親しくなったのはすべて同情からであった。