ブログ - 20180512のエントリ
男は車のルーム・ミラーを下げて、後部席の女を見やった。スカートの下から黒の網目ストッキングに包まれた脚が覗いていた。
確かに形の整ったきれいな脚であったし、スタイルの良い美人だという男たちもいた。目つきがやはりおかしい、普通の眼付ではない、という者もいた。
彼の磁力はその脚の肉の奥に食い込んでいった。
ラブ・ホテルの部屋に入ると、二人は工場の手慣れた製造職人になった。快楽を求める手品師にもなった。手先、口先を器用に伸ばし、捻り、踊らせ、体の細部にわたって忍び込み、探り合いながら興奮と快楽の生産に励んだ。女は黒いスリップ一枚の姿でベットの上におもむろに四つん這いになった。お尻のS極を突き出した。網目ストッキングに濾されたピンクのTバックが細い、エロティックな紐で膣を締め付けているのを見せた。彼はそれに惹き付けられた。磁性が吸引力を強め、体のすべての部分を発火点に近づけ、炎を現しはじめた。地球のマグマであった。炎を放ち、火柱が立った。一つの目標を達成し、満足すると次の快楽を求めて進んだ。手の指、足の指、唇、舌、歯、皮膚、筋肉、神経、血管、血液、唾液、精液、リンパ液、酸素が総動員されてアタリを求め、全身を駆け巡り、電磁波をきらめかせた。ベットの上の白いシーツや床の赤いカーペットに性エネルギーを放出し、巻き散らした。黒い網目ストッキングやつる草模様のセピア色のブラジャー、黒のスリップがぐしゃぐしゃになって散らばり、錯乱し、床の赤いカーペットの上で妄想を浮かべ、したり笑みを浮かべていた。彼女の妄想癖とシンクロし、波長を合わせていた。
こんな時には合鍵と鍵穴はうまく合わさった。フックが外れ、二人はたがいの甘い熱気にむせ返る部屋の中で、自ら出す電磁波・快感からていねいなもてなしと心遣いをうけた。三十年の結婚生活の中で凸部と凸部は精巧に研磨され、無数の形・ギザギザ模様が仕上げられ情報を内部に蓄積していた。NとSは磁極になった。もっとも緻密な結合は一種類しかなく、それは二人のものでしかなかった。深さは長さを的確に調節し、摩擦運動に余裕を与え効果を高めさせた。長い膣道が短い膣道に劣ることはなかった。子宮は半ばまで降り、膣道は挿入物の長さと合わさり、先端との軽い衝突感と摩擦回数を減らすことはなかった。逆に快楽の生産効率を上げた。
反発し合うエネルギーと吸着しようとするそれがモーターを回転させ始めた。ビュンビュン唸りながら快感をまき散らし、発電し、熱を起こして電磁波を放ち続けた。臨界点に向かっていた。電圧=電流×抵抗であった。日頃、彼は彼女を嫌っていたので、その抵抗感が強いほど高電圧になった。
ああ、溶けちゃいそうよ。
子宮がピクピクして痙攣してるのがわかる。
とろける!蕩けるのよ!
彼女は叫びつづけた。
脳と性器は等しい知恵・知性を持っていた、というより性器は脳の一部であった。