ブログ - 20170813のエントリ
NHKの仕事を辞めて、5年になる。ときどき、その時に出会った人のことを思い出す。仕事は夢中になってやっていたが、NHKを観てももいない人、必要としてない人、また生活の苦しい人から、法律で義務付けられています、といって強制的にもらうことには心を痛めていた。
スティーブ・ウオールというアメリカ人の家に2か月に一度集金に通っていた。若い男だった。小柄で痩せていて、キリスト教の宣教師であった。私は英語が好きだったので下手な英語でも話すのが楽しみであった。「今の私はこの仕事が辛いのです」ある時、そう言った。すごく身軽な男で私がチャイムを押すと、玄関から現れ、片手をついてジャンプし、1メートルもある塀をひょいと乗り越えて私の前に立っていた。
彼は、「あなたはもう少し上手に英語を話せるようになったら良いんだけどね」と言いながら、4680円の金を出した。
そして、次のように言った。
「あなたの仕事は誰かがしなければならないのですよ、必要性があるのです」
私は助けられた気持ちになり、それから23年間その仕事を継続したのだった。
NHK営業部の職員で、東大卒の若い男がいた。彼らにはノルマもなく、厚遇されていたが、週に何日かは外に出て、クレームへの謝罪や集金、契約取りをした。彼はある時、「俺はこんな仕事をするために東大を出たのじゃない」と言って、他の部署に異動した。その言葉は一般的に言ってそうであろうがわたしはスティーブ・ウオールの言葉を思い出し、東大の男は賢くないと考えた。社会には学歴偏重、学歴崇拝の価値観が続いているが、それであれば従業員をすべて東大卒にすれば会社や組織は繁栄するであろうか?いや、潰れる、と思う。集団や組織には誰もやりたがらない部門がある。業者に任せれば良いであろうが、その部門には価値があるのである。NHKであれば、視聴者と直接対応することで彼らのNHKへの見方がわかり、改善の材料になるのである。
読者に言いたいのです。色んな仕事をしてる方がいらっしゃますが、あなた方の仕事には社会の必要性があるのです。必要性があるから仕事として成り立っているのです。