25、6歳の頃、御木徳近さんの本(捨てて勝つ)を読んで感動した。それは欲望にとらわれ、執着する生き方の不幸を説いた本であったが、わたしは捨てきれはせず、金、女、酒、煙草、音楽、映画、勉学など拾うものばかりに熱中し、忙しかった。
職に就き、結婚し、妻子を養い、たった独りになった今こそ、(捨てて勝つ)の言葉が身近になった。それらの欲望は生きる原動力であったが、原動力が衰えていく今は(捨てなくても去って行く)のである。最後に残るのは命である。
(命)がなくなる時、(天命を全うして)わたしは勝つであろう。