動物達は集団で狩をする。役割分担や狩の構成をなんらかの方法で伝達しているし、動物の世界でそれは日常的に行われている。
人間は意識を表情、身振り、手振りを使って伝えていたが、信号に変わり、記号、言語、文字とツールを発明していった。動物たちはツールを持たず、それゆえに意識を波動エネルギーという原初的な形で表現する。目には見えないが、人間並みの複雑な状況を瞬間的に正確に仲間同士つたえあっている。人間は動物の時代から進化して波動(テレパシイ)を言語に変換していったわけだ。
すると、悪阻が転移したというのはそのような原始的いや人類が昔持っていたテレパシイのようなものではないか?
(情報が転移したのか?)
パチンコ屋の火事は事実である。
隆の転勤先での十件の火事も事実である。もしかすると、隆に玲子のエネルギーが刷り込まれていたのではないだろうか?呪いのエネルギーとでも言うべきものが。それが火になって転移したのではないか?
彼はあの忌まわしい火事にとり付かれてしまった。
ある時、勉は父のパソコンの削除データの復旧にかかっていた。すごく時間がかかる面倒な作業であった。一部しか復旧できないのでそれを繋いでいき、全体をつくっていく。ジグソー・パズルみたいである。
父は不倫を知っていたが、嫉妬心を表に出す男ではなかった。
沈着冷静に事を運ぶ男であり、その冷たい印象が家族や人にうとまれ、また尊敬されてもいた。葬儀が盛大だったのは、業界の集会を兼ねていたと同時に彼の信奉者が多かったからである。その地域で一番大きな葬儀場を借りたが、三百人近い参列者達は場内に埋まりきらずはみ出す有様であった。
父の存在が大きければ大きいほど勉の存在は小さくなり、彼の出番がないどころかますます萎縮し、後退していった。後退の先は母であった。
勉はあの日の出来事を思い返していた。
年に一度くらい思い出すが、後は封印し誰にも話した事はない。
彼は父が一週間ほど渡欧し、ドイツでの国際学会に参加するため、家を不在にすることを知っていた。その留守をねらって、彼は帰宅した。
小学校六年の時に描いた絵を思い出し、家の中のどこかに眠っっているのではないかと気にかかっていた。スケッチ大会に引率されて田舎に行った時、
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