横向きに回転し始めた。気持ちよさそうだ。しばらくその状態で休んでいたが、体をしゃくり上げ、跳び跳ねしはじめた。つぎに水面を歩いている。二個のゴルフボールは並んで円を描きながら泳いでいる。
ペットボトルもゴルフボールも生きている。まるで小動物のお祭りである。人知れない世界でこっそり遊んでいて、その姿を盗み見されたように。
動画はそんな光景を五分間も映すと、用水路の上流にポイントを変えた。家並みと橋、道路を行き来する車、青空を見せて止まった。
次に黒色を背景にした白文字の画面に変わった。
(水の木霊になって動き回っているペットボトルとゴルフボール
わたしはそこに社会で活動する人々を見る
ペットボトルとゴルフボールに意志があるかなんて言ったらおかしいだろうか?
意志は水流の反映でありそのエネルギーを受けて反応していると考える
私の意志と同化し治癒していった患者さんたちのように
わたしは至福の境地で旅立つ
ただ
一人の男に(おれの女を返せ)という木霊を残して
私の分身たちが木霊を受けついで私の意志を引きつぐであろう)
勉はマウスを押してページをめくらなかった。
そこで終わっているのか先を伏せているかである。
勉は両腕を膝の上に置いてじっとしている。
智樹も勉も無言であった。
「何ですかねえ?」
勉は言った。
「あんな動きって考えられない。ヤラセじゃないですかねえ?」
勉はペットボトルの動画のことを言っていた。
「僕も初めて見るけどそんな不自然さはない。水底から魚にでも引っ張られてると考えたけど、思い出した、魚釣りをしてる時大きな魚に食われるとウキがあんな沈み方をする。水の流れだよ。それにしてはすごく速い動きだな。正面から落ちる水と両端から落ちるのがいろいろ交じり合って複雑な動きをしてるんだよ。水流にあやつられてたんじゃないかな」
「さすがにあなたは推理力がありますね。しかし、ペットボトルに変にリアリティがありますね。
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