晩御飯のことまで言ってしまい、智樹は美咲といっしょに食べ ることになるだろうか?と疑惑がわいて、すぐにでも現地に飛んで行きたいと衝動に駆られたが、おさえた。
 「わかった。俺にできることがあったら電話しろよ」
 「うん。悪いなあ」
 芳恵は電話を切った。
 「事故か?でも人身事故でなくてよかった」
 智樹は美咲に出来事を話した後につぶやき、お茶を二人の湯のみに注いだ。
 「お茶を入れてこようか?」
 美咲は急須の傾き具合から空になってると知り、彼はうなずいた。
 (するとどうすれば良いのだろう。今日の会合は打ち切って美咲は家に帰すべきだろうか?)
 智樹は考えたがはっきりしなかったので芳恵からの次の電話を待つことにした。
 (警察に電話を入れて事故の現場を聞いて行ってみようか?)
 とも考えた。
 「寒いわね!」。
食堂間からもどると、急須をテーブルに置きながら美咲は肩を震わせた。
「寒い!陽が落ちたからだよ」
智樹は立ち上がると柱に掛けられた温度計をみた。
「十度だよ。エアコンが効いていない」
「寒いはずだわ。エアコンの掃除なんかしてる?」
「したことないよ」
「ファンやネットの埃をとってあげないと効かなくなってしまうのよ」
智樹は裏口に出ると、倉庫の中から石油ストーブを持ってきた。
芯を上げ、点火ボタンを押したが、火はつかなかった。
「灯油が空だよ」
智樹は言って裏口に行き、灯油の入った容器とノズルをもってきて給油をした。
 「火がついたよ」
 智樹は火のついた石油ストーブを美咲のそばまで運び、ノズルを差し込んだままの灯油の容器は蓋をするのを忘れていた。
 「もう、四時半だわ」
 美咲は言って、庭を見た。
 十一月の暗がりが迫っていた。空の姿が消え、木々の色が奪われ、闇の訪れが不安を告げていた。
 庭をはさんだ向かいの家の台所は暗いままである。 
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