彼女がエレベータで子供達と屋上にのぼると、一気に冬の寒さがおそってきた。
 午後三時の約束の時間には間に合わない。智樹は不審に思い案ずるにちがいないが、これまで自分に加えられた不安とショックからすればたいしたものではない、彼女はそう考えて、振り払った。
 寒気かったが、青空が頭上に近づいているのは気持ち良かったし、子供達は豆汽車、飛行機、メリーゴーランドの動物達を見ると目を輝かせた。
 二歳の長男は飛行機に走り寄っていった。
芳恵は入場券を買い、三人で乗った。機体は上下に揺れ、単純にまわるだけなのに屋上ということがあって気分が盛り上がっていった。風をうけ、童心にかえるのは久しぶりであった。
「あんたたちはまだ本物の飛行機に乗ったことなかったなあ?」
彼女は後部席の長男にきいた。
「うん」
「そのうち乗るやろうけどこんなもんとはちがうで」
「どうちがうん?」
「乗っててあんまり気持ち良いもんやないけど、アメリカでも中国でも世界中どこにでも行けるんや。あんたもはよう大きくなって世界中を飛び回りなさいよ。いろんな国の人に会うて楽しい思い出をつくるんや。お母さんは外国にいったことがないのを後悔しとる。まだチャンスはあるけどな」
芳恵は乗り終えると、実家に通販で頼んでいたフライパンセットが着いてることを思い出した。コゲのつかないフライパンということで必要性をおぼえ、注文したのであった。
 父のケイタイに電話を入れ、宅配業者に代金を払ってくれ、と頼んだ。
 この時、智樹から彼女のケイタイに電話が入ったが、通話中であった。
 彼女はデパートの七階から地階まで商品を見ながら降りて行けば二時間の時間などすぐにたつと考えた。屋上のベンチに腰を下ろすと、出店でたこ焼きを買い、ベンチに腰を降ろして子供達と食べはじめた。
 
第二十六章
 
 智樹はソファから立ち上がると、急須を持って食堂間に立った。 
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