時間は午後三時になった。
インターホンも智樹のケイタイも鳴らなかった。
「道路が混んでるとか道になれないとかあるからね、時間通りには来れないかも」
智樹は前のめりの体を少しずづ背もたれに伸ばした。
美咲はもう一度、竹林の壁を見回した。
「あれは見あきたんでそろそろ張り替えようかと考えてるんだ。オヤジが竹の子山が好きだったけど」
「でも、こんな素晴らしい壁紙を見たの初めてだわ。緑が好きなのね、あの庭だって」彼女はレースのカーテン越しに庭に目を向け「ずいぶん緑が豊かだわ。でも一ヶ月も雨が降らないから水やりが大変でしょう?」
と言った。
「水もやらなきゃならないけど、今のところそこまで気が回らないよ。この家は爺さんの代から住んでるから百年はたつかな。まわりに新しい家が建つからこの家はみすぼらしくなる一方だよ。五十年前に父が改築したんだけどね」
インターホンが鳴った。
智樹はすぐに立ち上がって受話器を取った。
「お休みのところ申し訳ありません。少しお話をさせていただきたくてお伺いしました」
「どなたですか?」
「それはお話の中で申し上げます」
「もうしわけありませんが、取り込み中なので失礼します」
智樹は長話はしたくなかったので受話器を置いた。
「宗教の勧誘かセールスさ」
彼はソファに腰を下ろし、テーブルの上にある急須に目を向けた。お盆の上には五個の湯飲み茶碗が並んでいる。ポットの湯を注ぐとお茶の用意が出来るようにしてある、と彼女は読んだが自分がタッチしてはいけないことだと考えた。
午後三時十分を柱の時計が指していた。
智樹はそれを見て少し首を傾げ、考えてるふうであった。
ケイタイを取り出し芳恵に電話を入れようとしたら、門扉のインターホンが鳴った。
智樹が出ると、町内会費の集金です、と言った。
「どうぞ中に入ってください」
と彼は言い、玄関間に出ると、後ろ手で応接間のドアを丁寧に閉めた。玄関のドアが開けられたので彼は笑顔をつくり、金額を聞いた。顔を見ると二軒隣の主婦であったので「ご苦労さまです」と言い、お金を払った。彼女はお金を受け取ると、
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