で残りはどちらともつかなかった。無言電話は3パーセントであった。
 結局、いつものとおりの五万部の発送で押さえた。T教からの接触も攻撃も反応らしきものはなかった。
 「おおいに意気込んだんだけどこんなもんだったんだなあ」
 オーナーは期待はずれ顔を見せて智樹に言った。
 「全国紙が書いたとなるとちがったでしょうがね」
 智樹は正直に言った。
 「まあ、いいさ。良い教訓になった」
 発行日から一週間後にオーナーは社内で言った。
 ただ一件だけ、智樹の印象に残った意見があり、次の内容であった。
 (それはあなた、宗教というものを純粋な目で見るからですよ。失礼ないいかたですが、さぞ鬼の首をとったような気持ちでしょう、わたしは書いてくれてうれしいのですがね。太平洋戦争に従軍したわたしに言わせればどんな組織だって個人だってあらゆる手段を使って力をつけ、権威をつくっていこうとするものなんですよ。国家だろうが企業だろうが皇族だろうが暴力団だろうが暴走族だろうが、みな同じですよ)
 
第二十三章
 
 男と女の結びつき、あるいは同性同士の場合もそうだがそれはどこか謎めいた部分がある。外見も性格も対照的で釣り合いの
取れないカップルが夫婦や親友としてぴったりくっついていることにおどろかされることがある。(赤い糸で結ばれている)という言葉があるが、それに象徴されているように顔つきや雰囲気や物腰がどうだったではなくすでに求める相手の像は本人の潜在意識の中に出来上がっていて、あとは焼き付けられるのを待っている状態なのである。写真の場合だとすでに潜像がつくられていて、仕上げを残している状態だということである。
 片方がいくら精を尽くしても結ばれないものは結ばれず、結ばれる場合は容易に結ばれ、遠ざかる場合は遠ざかるべくして遠ざかる。ただ、引き合う力の最大公約数が大きければ大きいほど結ばれる対象の数は大きくなる。それが、モテる、ということになる。
 美咲と智樹の場合もそうであった。
 彼女は彼との最初の出会いの日をよく思い出した、特に彼との離別を決意してからはたびたびであった。

 三年前、美咲は女友達の主人の、彼は精神科医であったが、

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