「良いよ」
隆はこたえて、家庭生活にいることを感じた。
第二十一章
智樹のケイタイにかけてきたのは市役所のホームページに中傷記事を書かれた主婦であった。
「ともかく、気持ちが悪いのですよ」
主婦は切り出した。
「これで二度目なんですよ。今も集まりはじめています、うちの玄関前に。うちの家をながめたりひそひそ話をしています。T教の信者たちが」
彼女はそこで言葉を置いた。
T教という言葉を耳にしただけで智樹は緊張し、戦闘体制に入った。T教を記事にすると紙上で予告して二週間になるが、直接的な反応はなかった。
「何人くらいですか?」
「今のところ十人くらいですがこの前は四十人ちかくに増えていました」
彼女の声はおびえているのか力がなかった。
「四十人?」
智樹は鸚鵡返しに言った。
T教の信者は人口の一割ほども占めている。彼女の団地は五百世帯だから、一割を動員したとしてもその数にはなる。
「警察に事情を話して相談したのですが、はっきりした犯罪ではないので動けません、という返事でした」
「これからすぐにそちらに行きますが、わたしとお宅のつながりは知られたくないので訪問することはありません」
「助かります。お願いします」
彼女の声は元気になった。
日が暮れはじめていた。
智樹はバイクで現場に着くと、(先祖の墓)のそばに停めた。
戸建ての団地はその上の区画を一丁目にして、五丁目まで伸びていた。県の住宅供給公社が開発したのだがお役所仕事にふさわしく立地条件も悪くて家が売れなかった。最寄りのJRの駅からは車で三十分はかかり、スーパーマーケットには車で二十分はかかり、近くに商店はなかった。二年前に五百万円ほど値下げをして売り出し、やっと買い手がつくようになったが、すでに購入していた者は一千万円の評価損が出ていた。
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