それはそうだが、次にもう五十万部、計百万部を買い取らせる。じゅうらいの契約先、五万部にはきちんと発送する。
 でも、今の話は予想であって現実はどうなるかわからないじゃないですか?
 そのとおりだ。だから、次の号にT教を記事にすることを予告するんだ。新聞社に印刷の仕事を回し、テレビにコマーシャルまで出してマスコミの口封じをしてるとな。それを知ったT教がどんな反応をするか、まず見るんだ。相手のやり方は市民新聞に電話をひんぱんに入れて電話が通じないようにし、業務妨害にかかるだろう。電話番号の探知をしデータをとっておけ。警察に業務妨害だと訴えろ。T教が市民新聞の販路をつぶし新聞が世間に出ないようにしたらその経緯を資料にし、インターネットで記事を出し、世間に暴露してやろう。
市民新聞はホームページを持っていた。
 「そして、俺のもう一つの狙いは、わかるか?」
 オーナーは声をひそめた。
 智樹は予想できたがすぐには出なかった。
 「T教と対立してる宗教団体に市民新聞を売り込むんだよ」
 オーナーは笑った。
 「わかりました」
 智樹は静かに興奮し、力がみなぎった。
 オーナーの次の狙いはT教が口止め料を出すことであろう。
 智樹には読めた。
 彼は新たな敵を見つけた。
戦いつづけなければつぶれてしまう。
泳ぎつづけていないと呼吸が止まって死んでしまう鮫みたいに、戦うことで生きかえり、パワーアップするのだった。
 主婦には、その話に興味があるから市民新聞の記事にすると言い、今後何かあったらを情報をくれ、といって別れた。
 もちろん、中学生のイジメ事件のことを彼女に尋ねるとじゅうぶん過ぎる情報をくれた。
 智樹はオーナーの言ったように市民新聞の次号に予告の記事を出した。
 
第十九章
 

 (鳥のさえずりが聞こえるんや、田舎って。そっちではそんなことなかった。雨が降ってて降りやむかどうか心配してる時なんか、鳥がさえずりはじめると降りやむんやわ。そして空が明るんでくるんやわ。鳥が教えてくれるんや。下の子をあやしながらそんなことがわかったんや。自然って不思議やわ) 

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