クリスマスツリーを一晩中チカチカさせて隣人の睡眠の妨害に気づかない人もいらしゃるんですね)(高い木がわたしの家の庭の風通しを悪くしてるのがわからないなんて、感性がうたがわれますよ)などと相手の個人名は出さず、市役所の掲示板に書き込みをはじめたのである。
それだけではなかった。主婦が高校時代に担任教師と恋愛をしたこと、ペットの犬を散歩させていて車に撥ねられ、彼女が一ヶ月ほどウツになったことなど、すっかり忘れていたことまで書き込まれた。
彼女はおどろき、怖くなった。
Kは小学校の教頭をつとめ、某宗教団体に入っていることがわかった。信者は国民の一割まで増えていて、とうぜん相互扶助の方針を持っていたがそれは信者どうしの世界だけであり、利益追求、排他性、政治志向が強かった。異教は邪教とみなして排除した。巨大な組織に成長し、情報網が張りめぐらされ、会員はあらゆる地域、会社、業界、組織、学校に属していて、情報をやりとりすることが出来た。主婦の高校時代の学友が信者であれば彼女の過去を洗い出し、Kに情報を流すことは簡単である。
智樹はその宗教団体との間に確執があった。
人を助けます、といった偽善者面して金を集め、信者を増やしていることに我慢ならなかった。最初は信者を精神的経済的に助けるがつぎはその数倍の金と労力を取り返すように仕組んであり、脱退しようとすれば(地獄に落ちる)という脅迫が待ち構えている。暴力団と大差ないくせに宗教の仮面をかぶり、善意ぶる、そこが腹立たしかった。
その宗教団体はマスコミさえ押さえていることがわかった。十年前は評論家や政治家がその宗教団体との戦い本や記事を出したが近頃はまったく出なくなった。新聞や週刊誌には教祖が外国で寄付をし名誉市民になったとか名誉ある賞をもらったとか出るばかりで、スキャンダルは姿を消した。その宗教はあらゆる団体、組織の中にウイルスのように忍び込み、金を仕込み信者を増やし、情報網を張り巡らせた。さまざまな団体に利益供与をし、人脈を増やし肥え太り不動の権威を確立した。
智樹が大手新聞社で記者をしていたときであった。彼はその宗教団体が新聞社の印刷部門に宗教新聞の印刷を頼み、新聞社の赤字を回避させ、口封じにかかっていることを知り、次月のスケジュールの中に取り組み記事として入れた。編集長はスケジュール表を見たが押印をせず、黙って返してきた。智樹が理由を問うと、個人プレーは困るんだよ、会議で決まっていないじゃないか、というので次月の会議の場で案件として出すと、編集部長に呼ばれ、
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