シリーズ1と2が開かれた。
 智樹は相手の出方を待つことにした。
 「さて次号は、わたしがあなたの家の前に越してきた。つぎにあなたの浮気がばれて奥さんの精神状態がおかしくなり、いやその前に(俺の女を返せ)という出来事ですね?」
 佐藤は智樹の返事を待った。
 智樹は構えの幅を広げていた。
「いやいや、あなたが高橋徹の妻と浮気してるなんて知らなかった。二人ともわたしの親友ですよ」
佐藤は言葉を置いて、返事を待った。
智樹は黙るしかなかった。
「わたしは彼女と友達として学生時代から長いつき合いがありますが、彼女にそんな気配なんていっさいなかった。女は怖いですね。高橋とも親友ですから、年に二、三回はいっしょに酒を飲んでいましたがそんなことはいっさいしゃべらなかった」
 佐藤はそこで言葉をとめ、智樹の目を見つめていた。
 智樹は相手に話させるだけ話させようと考えた。
 「美咲とは大学生時代からの友達です。私が美咲ともし結婚していたら彼女は浮気をしただろうかなんても考えました。そんな女にはとうてい見えなかったけど女はわからない」
 と佐藤は言って
 「この記事は個人が特定できないように書いてありますから私としてはクレームのつけようがないわけですが」
 言葉を置いた。
 沈黙が二人の間に溝をつくっていた。
 佐藤は時間をもてあまして庭に目を向けたが、関心があるわけではなかった。。
「このさいはっきり言っておきましょう。(飛び火)なんて言うタイトルをつけてあるけど、確かにわたしの赴任先でここに書いてある火事が起きたことは間違いないけど、すべての火事をわたしが知ってるわけじゃないし、わたしが故意に火事を起こしたわけではないですよね」
「はい、そうです」
 智樹はこたえ、もっともだ、と考えた。
「私つまり当事者なんですけど、どうも腑に落ちないというか不審感を抱くのですよ」
 佐藤は言って、考え込んだ。
 智樹は相手の心の中を直感していた。
「こういうことに考えついたのですよ。このドキュメントは最初から狙いがあり読者を誘導しようとしている、ということなんですよ」 
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