そしてまた一方、崩壊・再生の感覚が人々を興奮させていた。

快楽につながっていった。
祭りでもあった。
水浸しになった地面は車のタイヤや足跡に踏み荒らされ、消防車が二台、横付けになっていた。
「親方は大丈夫かあ!早う助けない!」
男は親方と呼ばれていたのだ。
「金庫は大丈夫か!早う持ち出しない!」
など悲痛の中に歓喜を混じえていた。
誰もが酔い、悲劇の祭りを共有していた。あんたは俺であり、俺はあんたであった。男も女もなく、子供も大人もなかった。年寄りも若者もなかった。何の迷いのない波動が一つの共同体をつくり、燃え上がらせていた。
少し離れた草むらに二人の男女が居た。
身を潜めて火事を見物していたが、異様な興奮に触発されて性交を始めた。女は炎になった。男は炎の中に射精した。交接したまま、二人は一つになった。
消防車が駆けつけていたが、水を探すのに一苦労だった。
防火用水の備えなど、離れ離れに孤立している家のためにはなかった。川は近くになく、灌漑用水もレンコン畑の水も水位を下げていた。
二百メートル先の堤から水を引くことになった。
それは後日、わたしが大蛇探しを始めた起点にあった。
見物人も手伝ってホースを伸ばし始めたが、火の勢いのほうが早かった。トタン屋根の下は藁だったから、実のところ手遅れだった。家を囲んだ忍び返しが消火の妨げにもなった。いっそうの事きれいに燃え方が手間が省けて助かるというものだった。
家は事務所と親方の別宅を兼ねていた。彼には三人の女と六人の子供が居て、それぞれ離れた所に住んでおり、火事の発生時、午後三時は無人の状態であった。発生源は居間の畳という調査結果がでたが、放火なのか失火なのか分からずじまいになった。もとより、住民達の結束感が強く、警察も捜査のやりにくい地域である。
消火活動が一段落したがほとんど燃えた後であった。
地下室が作られていたことがわかった。
一つは博打場、もう一つは貴金属や骨董品の隠し場所であった。
 
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