机の書類が燃えはじめカーテンに燃え移っていた。その場に脱ぎ捨てていたズボンで火を叩いたが火は消えず、消防車が駆けつけて消した。佐藤の家は無傷。
九愛知県豊田市で戸建て住まいのケース
隣の四十三歳の主婦が体に灯油をかけ、ライターで火をつけて焼身自殺。窓が密閉されていて酸欠になり、部屋のカーペット、ソフア、ベットが燃えて火は消えた。本人は焼死。警察は他殺のケースを想定して捜査したが証拠は見つからず、自殺と断定。佐藤の部屋は無事であった。
十富山県新湊市で借家住まいのケース。
隣家で、精神病院から一時退院した四十歳の男が床に灯油を撒いて放火した。火は燃え上がり、窓から噴出したところを離れの家に住む母親が消防署に通報し、ほとんど燃えつきて鎮火した。男は怖くなって逃げ、そばの林の中に潜んでいるところを発見され、逮捕された。
佐藤の家の一部は焼けたが、消防署の放水によって鎮火。
十一東京都世田谷区でマンション住まいのケース。
隣室で若い女がベットで焼死体で発見されたが、布団やパジャマは焼けていなかった。体は焦げた跡もなく、半分に萎んだ状態であった。鑑識の結果、人体の骨からの自然発火としか判断されないという結果であった。
佐藤のの部屋は被害なし。
以上が集めたデータである。
智樹はパソコンで調査報告書を作成しながら、火事の怖さを思い知った。彼の家の火災保険の受け取り額や消火設備、発火の可能性を考え直した。漏電防止装置は取り付けているが、煙探知機、高温センサー、警報機、パソコンのカメラから彼と妻の携帯電話への通報設備を業者に依頼することにした。
同時にこの事件の奇妙さを考えた。
高橋の居住先で、隣家での火事の発生が十一件中、八件を占めている。残りは二軒先が一件、三軒先が一件、四軒先が一件である。
偶然なのか因果関係があるのか?
依頼人同様、不審に思い不安になってきた。
こんなことがあるだろうか?
佐藤隆に原因があることは証明出来ないし、罪を被せることは出来ない。

一ヶ月後に山本から智樹のケイタイに電話が入った。近くで発生した火事、それに依頼した調査の進み具合を聞いてきた。相手は同じ事を何度も言って不安がり老人臭さを感じたが、 

前
火炎p41
カテゴリートップ
火炎
次
火炎p43