「あー危ない、ぶつかる!」

 後ろから叫びが起こった、香織の声だ。
 振り向くと、左方のマンションの駐車場からRV車が現れ、厳つい顔を見せて香織にぶつかりかけていた。
 車はぶつからずに通り過ぎたのだが、わたしはブレーキを踏んでいた。香織は体ごと押し出され、エア・コンのパネルに手を突き出し、体を支えようとした。(大変な事になった)、わたしは直感した。
 「大丈夫?」
 車を停めて、彼女の方に振り向いた。
 「たいしたことないと思う」
 彼女は落ち着いていた。
 わたしは考えた。たいした事では済まない、あのつんのめり方はむち打ち症を併発するにちがいない。警察を呼んで事故の証明を取るべきだろうか?呼べばそれだけでは済まない。二人の関係を聴かれ、いや、それはごまかしたとしても、二人の状況が記録に残る。
 わたしは車の外に出、彼女も続いた。
一人の男がRV車の助手席に乗り込み、猛スピードで去っていく。
車のナンバーは読みとれない。
警察に電話を入れた。
わたしは彼女を見た。
「呼ばなくても大丈夫よ」
「いや、あとあとの事がある」
彼女も顔を強張らせている。
わたしは事故の状況を確認するためにマンションの玄関前に立った。玄関の前は広い駐車場になっているが、その門から出てくるとき、門が邪魔して左右の見通しがきかない。一時停止をすべき場所である。RV車があれだけ接近していたと言うことは一時停止をしなかったということだろう。
パトカーが来た。
二人の警察官が降り、近づいてきた。一人はわたしに事故の状況を訊き、見取り図を描き、距離を測った。もう一人は私と香織の住所・氏名・生年月日を尋ね、免許証・車検証を提示させた。次ぎにRV車の特徴、行動を訊いてきた。警察署への出頭日を教え、事務的に
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