「ありえんやろうね。死ぬまで続くんよ。一つ、私はあなたに告白せないけんことがあるとよ。でも今は言えん、仲が壊れてしまうけん」
「なんね?」
「言えん」
彼女は言って目を閉じ、うたた寝を始めた。
弾ける音どこからかが、連続して伝わってきた。部屋の外からのようだ。
花火か?
わたしは香織の頭を静かに離し、立ち上がった。
窓辺に向かい、窓を開けた。河口の松林の先で黒い煙がゆっくり上っていた。大きな塊になって、滞り、少しずつ、墨を垂らしたように広がっていく。自衛隊の空軍基地のほうだ。
北朝鮮の攻撃だろうか?
(あそこは訓練基地だから攻撃されることはありません)
穂高の言葉がよみがえった。
目の前の河口でシジミ漁をしている男の姿が見えた。潮が曳き、浅瀬になった河床を大きな熊手で掻いている。熊手の柄を背中に担ぎ、両手で握って引いている。発砲スチロールで覆われた小さなボートは満載したシジミで喫水を下げている。熊手の中に貯まった泥を川の水で洗い、石やゴミを捨て、残ったシジミをボートに入れる。
黒い煙は広がったままだ。そこから物音は伝わってこない。
あれは事故だったのだろうか。
テレビのスイッチを入れ、NHKにチャンネルを合わした。料理の番組が現れた。エプロンをした女がフライパンの中の肉を炒めている。
臨時ニュースを待った。
香織はソフアの上で寝たままだ。
(ここでもし、石川に踏み込まれたら・・)
(言い訳のしようもない。車に香織が同乗している場面なら、偶然に出会ったけ、食事をしに行こうとしよる、と言える。がこの場面を見られたら、何が起こるか予想がつかない)
(勝手に会いよったら暴力団が来るけな)
あの時、石川は言った。
(でも香織は奴が紹介したのではないか。彼女は石川の女ではないし、親しくなったのは俺たちの勝手ではないか)
|
銀ラメのハイヒール p88 |
銀ラメのハイヒール |
銀ラメのハイヒール p90 |
