わたしは財布を取り出した。
「それは待って」
彼女は遮った。
「私はこのことをどうするか、考えてたの」
そう言って、続けた。
「出会いが、あー言う出会いやったけね。私があなたの生活の中に入りこむのが厭やったらお金を出していいよ。入り込んでも良いのやったら出さんで」
その言葉にわたしは考えた。
穂高が言ったように、この金は慰謝料のようなもの。一回一回払っている限り、累積して請求されることはない。それに石川に対しても、例え発見されたとしても、従来通りの関係が彼を介さずに継続していただけだという対面を作れる。
わたしはいつもの金額を差しだした。彼女は、これは車代、と言って五千円を返し、残りを受け取った。
第十三章
(私は今、金正日の意識の中に入っています。ですから彼の心が手に取るようにわかります。金正日は私であり、私は金正日なのです。間違いなく日本を火の海にしてみせます。短い時間で最大の犠牲者が出るようにしてです。日本人がお祭り騒ぎをして、都市に集まり、最も油断をしている日、例えば元旦、五月のゴールデン・ウイーク、お盆休み、天皇の祝日、等が考えられます。そして、我々が核実験を終え、データを収集し、テポドンのコンピューターをプログラミングし終えた日と一致する日です。原爆は地上五百メートルで炸裂しなければ最大の効果を上げることが出来ません。風や雨にも左右されますから、あらゆる条件を想定しておかねばなりません)
穂高からのメールが携帯電話に入っていた。彼が入院した次ぎの日だった。
これは中村の携帯電話で読まれている可能性があった。
(アメリカが迎撃ミサイルの実験に成功したといっても、五百機のテポドンを一斉に発射されて、すべてを打ち落とすことが出来ると思いますか?不可能ですよ。日本の六大都市が被爆し、原子力発電所が工作員によって攻撃され、地下鉄にサリンがまかれれば日本は終わりですよ。サリン事件と北朝鮮・ソ連との繋がりは闇の中に葬られたままです。私・
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