運転席のわたしに笑いかけた。日焼けした顔に、にんまりした意味ありげな笑いを浮かべていた。見たことはないが何か引っかかるものがあった。

 香織との約束は二人しか知らないし、尾行の車を注意していたがそれらしき姿はなかった。。石川だってわたしや香織を一日中監視することは出来まい。彼女は彼の女ではないし、関係も切っている。それに金で体を売っている女ではないか。
 その男の笑いはすごく間延びしていた。どことなく知能の低さからきているに違いなかった。
 青い空の下、広い浜辺はショベル・カーが行き来していた。砂を運び、彫刻展の準備をしていた。舞台が設置され、野外音楽堂が造られていた。一ヶ月後には砂の彫刻作品が造られ、コンサートが開かれ、花火が打ち上げられ、大勢の人が集まるのだ。
 香織はいつもの軽自動車で来ると、隣の駐車場に車を置き、わたしの車に寄ってきた。
 後部席に坐った。
 「夕べは眠れんかった。明け方までウトウトしとったんよ」
 身を乗り出して喋りかけてきた。
 「なんで?」
 「小学校の時、遠足に行く前の日があったやん?嬉しくて眠れん日が」
 「今日がその日というわけか」
 男の姿はいつのまにか消えていた。
 彼女に男の顔を見たか?と問うと、見たと答えたが、知らない顔だったという。
 「あの車、佐藤さんのよ」。
 彼女は前を走る車を指していた。
「お金を貸しとったけど返さんかったけ、消費者金融の人に頼んだら、すぐ返した。大阪弁で凄まれたら怖がるみたいね。サザエを取ってよう持ってきてくれた。私もサザエ取りに一緒に行って、あの人が海から上がってきたら、火を燃やして、体を乾かしてあげた」
 商店街を走らせていると、外を眺めながら勝手に喋り始めた。
 以前付き合っていた男の話しを平気で持ち出す彼女に、不快な気持ちになった。
 突然、彼女の甲高い笑いが起こった。
 「ああ、悲惨!ああ、悲惨!」
 隣を走るトラック、その荷台に豚が満載されていた。ピンク色の肌に金色の毛を光らせ、肥え太り、ブー、ブーと唸っていた。興奮にどよめいていた。何頭かは荷台の端に押しつ
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