中村は玄関のドアを見据えて言った。
穂高の寝室を垣間見たことはある。暗く、煎餅布団の周りに本やビデオが積み上げられ、横に大型テレビが置いてある。
「玄関から入ることは得策ではないでしょう」
三人の男が入れば、廊下の両側に積み上げられた本や雑多な物が崩れ落ち、脚の踏み場がなくなるし、身動きが取れなくなる。食堂間の方がすこしはスペースがある。
わたしは彼等に伝えた。
「食堂間のガラスを切って入ろう」
中村は携帯電話で、捜査車両を呼んだ。
ワゴン車が現れ、捜査員が降りてきた。
私達は庭を通って、食堂間に向かった。雑草に埋もれた地面にスコップが立ち、穂高が残飯を埋めた跡があった。
そこで異様な気分が襲ってきた。不快さに絶えられない。
三人は立ち止まった。顔を見合わせ、表情を探り合った。
「超音波・・、超音波発信器で私達を撃退しようとしている」
わたしはつぶやいた。
あの夜、食堂間で彼との話しが中断したとき、彼は立ち上がって別室に行き、タバコの箱の半分ほどのものを私の目前に置いた。しばらくして、わたしに異様な不快感が襲ってき、いたたまれなくなった。(超音波ゴキブリ撃退器)と表示してあった。
体外離脱をわたしに経験させようとしたときだった。
(これはまだ単三電池の電力ですが、周波数が合わないようですね)
彼は言って持ち去った。
わたしは捜査員にも聞こえるように言った。
「超音波吸収器は車両の中にあるが、電源を切ったほうが早い」
捜査員は答えた。
「電源はどこにある?」
中村は捜査員を見た。
「中に入って、ブレーカーを落とすか、電線を切る」
捜査員は電柱を見上げた。
「彼は発電機だって持っている。重力発電機まで考える人だから」
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