(でも、こんな場合はきちんと筋を通しとかないと、後で面倒になる。筋を通しておけばトラブルは起こらない)
わたしは言い、香織と会うことを石川に頼み、彼は承諾してくれた。
(あの人は嘘が多いけ、そんなんやったら、人から相手にされんようになるよ、ち言うたら、こんな男がおっても良かろうも、ち言い返してきた。そいけ、一年間も会わんかった。そしたら、電話を何回もかけてきて、しつこいけ結果的に会うようになったんよ)
(どうやって知り合ったんね)
(私が一番目のお母さんの部屋にちょいちょい行きよったら、石川さんが母によう饅頭を買うて来てくれてね。優しい人やねえち思うとった。その団地には石川さんと同じ運送会社で働きよった高野さんち言う人がおってね、パチンコ狂いで借金ばかりしてホームレスになったんよ)
わたしはその話に石川の部屋で聞いた高野を思いだした。
香織の示した駐車場は車を走らせているうちにわかった。百台も駐車出来る広さで、砂浜に面している。隣に小さな遊園地が設けてあって、螺旋状の滑り台が上から下へと三段になって降りている。赤、黄、緑の縦縞模様が入っている。
駐車場には一台の車も停まっていなかった。
夏は花火大会と砂の彫刻展でアピールしている所だった。浜辺の砂で五重塔や自由の女神や西洋の城などが精巧に造りあげられ、人の背丈の二倍はあった。夜にはそれらがライトに照らし出され、ロマンチックな雰囲気が出来た。すぐ近くで花火がうちあげられ、夏の官能的なムードを盛り上げた。新聞にも取り上げられ、その町の最大のイベントだった。
いつもはありきたりの浜辺でしかない。
駐車場の端にコンクリートの小さな建物が見えた。屋根が鋭い三角形状に切り上がって向き合い、四角形と円形の窓が設けてある。近未来的な印象がある。
気分がおかしくなり、吐き気に近いものが襲ってきた。ブレーキを踏み外しかけ、危うく踏んだ。車をバックさせ、端から二番目の枠の中に入れた。
車から降りて、トイレの前に立った。印象がつなぎ合わされたのがまだよく分からなかった。
海岸線に沿ったサイクリング・ロードが青浜団地の方に伸びている。右手の浜辺には波が静かにうち寄せている。
一ヶ月前に青浜団地から歩いて来た方向を、逆から見ていた。左側には防風林が見え、
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