とすると、男の両方の耳にイヤ・ホーンが入っているのが見えた。顔をよく見ようとしたが、伏せたままだった。
「中村さん!」
バイクを停めて、声を掛けた。
中村がおっとりした顔を見せた。
「このあたりに知り合いがいまして、探したが、家がわからん。散歩でもしようとぶらぶらしよります」
穂高の家からは百メートルほどの距離である。
わたしは両耳に当てられたイヤ・ホーンが気になった。ラジオのイヤ・ホーンを両耳に当てることはない。
あれは無線機ではないだろうか?
彼は刑事ではないだろうか?
(彼は刑事ではないだろうか?)
呟いているのはわたしである。屈んだ後ろ姿、その後頭部の薄い禿げ、から判断出来る。
バイクを停めて、中村に話しかけている。
わたしは自室のテレビの画像に釘付けになっていた。モニターの状態にしているので、放送局から送られたものでもなければビデオの画像でもない。空きチャンネルに飛び込んできた異次元の画像である。
仕事が一段落したので穂高の話しを思い出して、実行したのだ。
深夜、ビデオ・カメラを撮影状態にして闇に向けておく。それをテレビのモニターにつないでおく。すると、そこに異次元の世界がスリップし入ってくる可能性がある、と言う話しだった。
画面は暗くなり、消えた。
横島模様がしきりに踊り始めた。
(あれは何なの?)
女が言い、大きな穴の中を覗き込んでいる。
二人の男も同じ姿勢で覗き込み、三人は輪をなしている。
(タイム・カプセル、だよ)
痩せた男が呟いた。
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