思って後をつけていくと、小屋に入った。中を覗いていると、誰もいない小屋で服を脱ぎ、抱き合う格好をし始めた」

そう言って、
「わかりますか、相手が誰だったか」
と訊いてきた。
 「霊でしょう」
 「木霊です。純粋意識つまり霊魂の世界で愛し合ったのですね。でも言っておきますけど私は宗教は嫌いだし、否定しています。宗教は相互扶助、利益共同体、その業界に成り下がっていますからね。始めの話しに戻りますけど、昼過ぎに目を覚ました私は自分の布団の中で射精していました。こんなセックスが現実世界で味わえると思いますか?」
「味わえないでしょう。が、私は現実世界の方が良い」
「それはあなたがまだ 純粋世界を知らないからですよ」
わたしは黙り込んだ。
わたしは超音波式発情機は男性にも効果があるのではないか、そうすると強精剤以上の需要が見込め、市場があるのではないか、と言った。性的衰弱の始まった石川のことを思い出し、試してみてはどうだろうかと、付け加えた。
「男の場合は脳で感じるので、前頭葉に当てることになります。効果的な周波数がむずかしいですね。強すぎると危険です、超音波銃といって兵器にもなっているでしょう。傷を残さずに人を殺すことだって出来るのですよ。・・人間も波動を出せるのだから、念力で人を痛めつけ、殺すことだって出来る。牛の刻参りと言ってわら人形に釘を打ったりしていたでしょう」
 彼は言った。
 わたしは香織との出来事を話した。
 「私が何を言っても、あなたと彼女はもう引き返すことが出来ない。あなたは自分で話したじゃないですか、台風が来ることを予感した蜂は低い所に巣をつくると。台風の避難警報が出てもあなたは避難するタイプじゃない」
 「この写真の女は香織じゃないですか?」
 わたしの棚の上にかけてある写真に目を向けた。
 「似てますか?これは私が彼女の波動を送り、暗闇でフイルムに念写したものだといったら信じますか?」

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