この前、ネクタイ・ピンを探そうとツマの小物入れをかき回していると、ピンクのパンティに包まれたコンドームが出てきた。何日か後に確認すると、それらは消えていた。わたしは想像を巡らした。これが想像どおりの性的関係だとするならば、わたしの女遊びを正当化出来る要件になる。
(あなたは近頃、顔がきついわよ。仕事のストレスが貯まってるのじゃない?たまには風俗にでも出かけてみたら?)
一ヶ月ほど前、彼女がそんなことを言ってくれたのは親切心から、あるいは男性関係への後ろめたさからだろうか?それは想像するしかない。
「さっき庭に人影が見えたわ。顔は老人みたいだったけど体は元気そうな人。作業服を着ていたわ。ドアを開けて見たらいなかった」
ツマは怪訝なことを言った。
シルバー・人材センターに剪定を頼んだ覚えはない。リフォーム業者だろうか。
わたしは庭に出て人影を探した。人影は見えなかったが、空気の中に石川の顔と姿が現象化されていた。
仕事の構想が頭の中に現れた。
日曜日の午前である。在宅率はまだ高い。
二百室もあるワンルーム・マンションが脳裏に蘇り、わたしを呼んでいた。二年前に建ち上がり、その時は二十件近い契約を取った。単身者ばかりで出会いが難しく、その後の集金に苦労したが、入居者の入れ替わりがあるはずだった。百八十件の中には最悪でも一件の可能性は残っているはずだ。これが今日の成果になり、狩猟の快楽を与えてくれるはずである。
わたしはバイクに跨り、その城を目指した。十五階建てだから、城と言っても過言ではない。高台に建っているので遠くからでも目に付き、期待感を膨らませてくれた。
着くと、駐車場に目を向け、車の数を確認した。ほぼ半分を埋めていたので、百件の在宅はあるにちがいない。次に、正面入り口の横にある郵便受けに回った。メモ用紙に二百部屋の番号を記し、当社の新聞を取っている部屋番を消去していった。八十件の面接の可能性があった。
玄関の前に立つと自動ドアが開き、監視カメラが迎えてくれた。次のドアの上に、大きな張り紙が見えた。(居住者の方へ。新聞の勧誘やクリーニングのセールス等が、居住者に紛れて進入することがあります。注意してください)、その文字はわたしに先制をかけていた。
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