らですよ。その代わり繰り返しごとには強い。それは子育てをしなければならないからですよ。授乳をしたり、おむつを代えたり、昼寝をさせたり、風呂に入れたり、ともかく細々とした仕事が多い。そして、彼女らは清潔好き、それはいつも巣穴をきれいにしておくことが子育てには大事なことだからですよ}

穂高はある時言い、わたしも同感していた。
わたしは小鰺を丸ごと口の中に入れ、噛んだ。目の前の皿の上には、小鰺が目の色を失って並んでいる。彼等はわたしに食べられるために産まれてきたのではない。海の中を泳ぎ、海水越しに陽光を浴び、生殖をし、子を産むためにこの世に現れたはずである。わたしはその命を食べている。自然を搾取し、消化し続けている。それは仕方ないだろうが、自然に何かを、命を返しているだろうか?返ししたことがあるだろうか?・・いや、無い。常識人達に毎日動植物を殺戮して、食っているという自覚があるだろうか?
人間は高等動物なのだろうか?
そんなことを考えながらも食べ、アサリのみそ汁をすすった。さっき、店に鰯のすり身が並んでいたけど、次はタマネギのみじん切りをそれに混ぜて揚げ、ツクネを作ってみよう。と考えていた。
隣室で物音がし、ドアが開いた。
驚いて顔を向けると、女が現われた。
わたしはツマとして現象化出来たので彼女はツマになった。認知症にでもなっていて現象化出来なければ、侵入者に対して叫び声を上げていただろう。
ツマは、
「あら、美味しそうね」
と言って、キッチンに立ち、背中を向けて手を洗い始めた。黒のフレアー・スカートにデニムのジャケットという出で立ちである。
次ぎにその姿は黒のサテンのワンピースを着た姿に変わり、わたしは香織を現象化していた
「今日はショッピングに行くの」
と言い、
「嬉しそうね。たまには良いよ」
わたしは応えた。
彼女はツマに変わっていた。

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