わたしが番号を言おうとして、彼女のケイタイの画面を見ると、スキン・ヘッドの男の顔が現れていた。

 「誰なの?」
 「サイトの主宰者よ」
 わたしは見入った。どこかで見た顔だった。
・・穂高?
 「穂高って言う人じゃない?」
 「竜樹様よ」
 彼女は答えたが、坐った視線、そげた顎、逞しさと優しさの混じった表情は穂高のものだ。スキン・ヘッドの彼の顔は初めてで、四十代に見えた。
 彼女はケイタイのボタンを押し変えていった。
 色とりどりのモザイク模様が現れ、中心点を持ちながら広がっている。万華鏡、石川が開いた画像だ。
 「それ、石川さんから見せてもらった」
 「リュウジュが運営しているサイトよ。私、今、はまっているのよ。独りの方が集中できるけ、後でゆっくり見よう」
 「今日は最高のセックスだった。最高の気分」
 わたし言って彼女に同意を求めていた。
 彼女は返事をせず、わたしに目を向けなかった。
 「どうしたん?」
 と尋ねると、
 「私とあなたはまだ知り合ったばかり。もっと良いことがあっても良い」
 笑って応えた。

さきほどの駐車場に立つと、彼女はわたしと少し離れ、違う方向を見ていた。
石川の車が現われた。わたしが彼女に助手席を勧めると、首を振ってわたしがそこに坐ることを促した。彼女は後部席に坐った。
三人は無言だった。
彼女を近くのJRの駅まで送ると、車は石川のアパートへ向かった。
「良かったな?」

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