で身を包み、腰から脚のラインがセクシイだった。そうだ、そして、銀ラメのハイヒールをはいていた。その姿が正面からで列をなして連なり、次ぎに逆方向から、さらに次ぎに見下ろした形で連なり、次ぎに逆方向から、そしてあらゆる次元で重なり合っていた。それが人間の真実の姿なのだ。それを見た時、人は発狂すると穂高は言った。その言葉の意味がわかる。わたしにはワン・ショットにしか見えない。後は無数の虚像が散らばっているだけである。この俺の姿は一つの実像だが、次ぎの瞬間には虚像に変わる。新たな実像が産まれ、また虚像にかわり、フイルムの一コマ、一コマを連続させて生の流を造っていくだけである。
あれは香織ではなかったか?そうだ、香織だ。
どうして穂高が彼女の写真を?彼女のことは知っていると言った。
(私、先生に言うたんよ。この体を治してください。一年間もこんな状態で、いつ発作が出るかわからんけ、買い物にも散歩にも行けん。障害者になってしもうた。なんで私がこんな目にあわないけんのよ。涙が出てきて、止まらんかった)
どこからか、香織の声が聞こえていた。
わたしは微睡んでいた。
「そろそろ、出らないけん」
彼女が傍に、寝ていた。
「私、怖い夢を見た。体が動けんごとなって、スーパーの前で座り込んどった。救急車のピーポピーポが聞こえてきよった。私に向かって近づいてきよった」
彼女は言った。
「そして、病院で泣いたんやろう、体を治してください、って言うて。同じ夢を見たんやね」
わたしは天井の鏡に二人の白い裸体が並んでいるのを見ていた。わたしは真っ直ぐに鏡を見つめ、香織はわたしの方に体を傾げ、添い寝をする形だった。
「何のことやろう?」
「同床異夢じゃなくて、同床同夢なんやない?」
「ふん」
(初めて会って体を交えた日に同じ夢を見た。これはどういうことなのだろうか?)
「ケイタイの番号を教えて」
二人はベッドの上に並んで、腰を降ろした。お互いのケイタイの画面を開いた。
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