私である。二人の垣根なんて誰が造ったの?そんなもの、もともとありもしないのに。あなた、といっただけでその言葉はあなたと私を分離してしまう。孤独に陥れてしまう。でもこんなことも言葉でしか表現するしかないなんて耐えられない。肉体や感覚器官の方が正直だしよく分かっているわ。言葉なんてもう止めた)

香織はわたしの宇宙を包み込み、喘いだ。存在の奥底から熱い息を吐きながら、快楽を燃え立たせた。二つの火柱が立ち上り、混じり合い、一つになっていった。
爆発し、火の粉を吹き上げ、ゆっくりと散らしていった。
「ウオー!、ウオー!ウオー!逝く!逝く!逝く!逝く!逝く!」
彼女は宇宙に向かって連発し、叫び続けた。
わたしも彼女の後を追い、彼女の宇宙と重なり合った。
意識が消えてどこかに逝った。
やがて戻ってきた。
「ワハハハハー!ワハハハハー!ワハハハハー!」
大声で笑っていた。部屋中に響き渡っていた。
わたしの声だ。
覚醒剤でも打たれたように意気が昂揚し、力強い自分が居た。
香織の体が動かなくなっていた。揺すると、そのままグニャリとベッドの上に倒れた。目は白目を剥いて、開けたままだ。
驚いて、体を揺すってみた。
口をもぐもぐ動かしている。
(私ハ今アナタノ後ニ居ルノヨ。見エル?)
わたしは背後を見てみた。
枕元のティシュ・ボックスの中からティシュがはみ出、エア・コンの風に煽られている。揺れながら抜け出、一枚一枚漂い、上っていく。ライトの明かりを浴びて、紙の地が綺麗に透けている。
香織の姿はそこになかった。
(アナタノ頭ノ禿ゲガヨク見エル。悲惨ネ。御免ケド。ソンナノ見タッテツマラナイカラ、戻ッテ来ル)
彼女はわたしにしがみついてきた。目は正常に戻っていた。
「トリップしていたのよ。幽体離脱してね。主宰者から教わったの。今度二人で幽体離脱
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