年も老けていくのに気づいた。どこかで見た顔だったが思い出せなかった。(立花さん、何が起こるかわからんよ。私は知らんよ。私は知らんよ)どこからか聞こえてきたようだった。彼女はしばらくして顔を背け、死ぬ間際のように目を閉じた。さらに股間をピッタリ狭めて指の愛撫から逃れようとしていた。右脚を内側に少し捻り、その親指を内側に曲げて左脚の内側を擦っていた。親指の腹が生々しい姿で、食いしばっている。

もがき叩く音が、起こった。
「バカ、バカ、バカ。逝ってしまうじゃない」
力無い声で叫び、左手の平で、布団を何度も叩いていた。
(逝く=死ぬ)、と(生きる)は同じ現象なのである。穂高は言った。
この世は言語で表現され、かたどられたときから、真理を失っていった。言葉で塗り重ね続けることによってますます真理から遠ざかり、崩壊へと進んでいく。生き残るのは言語を持たないもの達であるかもしれない。
「逝く時はいっしょにいくのよ」
彼女は起き上がった。
「この汁のことなんて言うか知ってるう?」
と言って、ペニスを握り、その先に垂れた一滴の液体を見つめていた。
「?」
わたしは分からなかった。
「答えなさい。答えないと、オマンコの中に入れてあげないわよ」
「なんて言うの?」
「我慢汁。よく我慢したわね」
「我慢汁?蝦蟇の出す脂汗かと思った。よく考え出した言葉やね」
わたしは感じ入っていた。
彼女は中腰になって、わたしのペニスの上に跨った。排尿をするポーズでペニスを押し入れ、わたしの宇宙はユックリとブラック・ホールの中に吸い込まれていった。二人の宇宙は挨拶を交え、お互いの刺激と快楽の効果の度合いを確かめ合った。
(この時だけ、すべてを忘れることが出来るの、自分自身の存在さえも。逆に、確認出来るの、私が私であることを。私は宇宙と一体になり、有でもあり、無でもある。いや、そんな次元を越え、小も大も美も醜も善も悪もすべて便宜的に設定された対立概念を越え、言葉に汚染されない本来の宇宙の意識の中に戻っていくの。私はあなたであり、あなたは
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