ですか」

彼は言った。
わたしは穂高の近況を喋った。自分以外の人間が彼の言動をどのように考えるかという興味もあった。
「彼の言うことは少し変わってはいるが間違ってはいない。オウム真理教って知っているでしょう?あれにどこか似ているが、科学的に表現しているところが違う。次ぎの時代をになう精神かもしれない」
別れ際に彼は言った。

第五章

「このあたりに俺を追っかけ回しよる女がおる。俺が若い男を紹介してやったら、無口やけ好かん、ち言うて、二回目はすっぽかしたけ、紹介せんごとなった。そしたら、女はしつこく電話をかけてきてな。生活に困っとるんやろう」
石川は戸建ての団地の中を、軽々と車を走らせていた。そこはわたしの受け持ち地域ではなかったが、隣の市だったので馴染みはあった。
わたしは助手席に脚を伸ばして坐っていた。
彼は事実に基づいて話しをする男ではなかった。幻想の中で生き満足するためには、事実を自由自在に変え創作した。そうでもしなければ自己の惨めな現実に耐えられなかったのだろう。
「この前、例の催眠商法の説明会に行ってな。話だけ聞いて、洗剤をもろうて帰ろうとしたら、そこで顔なじみになった女と顔が会うてな、車に載せて送ってやった。俺の仕事は売春斡旋業やけ、用がある時は電話しない、ち言うて携帯の番号を教えてやった」
「電話はかかってきました?」
「そのうちかかってくるよ。金に困っとるふうやったけ。人助け、人助け。あんた功徳ちいう言葉を知っとるな?」
彼はいかに自分に徳があるか喋り続けた。
彼とわたしは例の女を迎えに行き、わたしは彼女と二人だけになることになっていた。
三日前、石川からわたしの携帯電話に、新聞代を払うから来るように、とかかってきた。わたしが部屋を訪れると、一ヶ月分を払い、女の話しを持ち出してきた。会うことを執拗
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