体は自然なことだが、同居して一生生活すること、それが制度としてもうけられていることはおかしい。ほとんどの動物は子育てが終わると、雄と雌は離れ、違う相手を求める。添い遂げようとするのは人間だけである。それでうまくやっている人について異議を挟むつもりはないが、自分は五度も同棲生活に失敗した。日本は離婚が増えているが、アメリカの家庭はシングル・マザーや異母兄弟・異父兄弟の家庭が普通になっている。結婚制度を設けたのは為政者が国家を統制しやすくし、税金を世帯割にして取りやすくするためだけであり、支配者の利益のためである。我々はそれに奉仕させられている奴隷にしかすぎない。

「でも女がいないと淋しくないですか?わたしに妻や恋人が居なければ母親を失ったような気分になる。日本の男が妻を(母ちゃん)と呼ぶ気持ちは分かる。」
「それは日本が農耕民族だったからですよ。韓国でもそう呼んでるみたいですね。狩猟民族である欧米人にとって、夫婦関係はもっとドラスチックでシビアですよ。・・・以前同棲していた女に、(あなたにとって、私はいったい何何ですか?本当に人を愛したことがあるんですか?)と訊かれたことがあった」
「なんて答えました?」
「言葉に出して答えると嘘になるから答えようがない。私は人間の意識なんてコンピューターと同じで物質の複雑な反応としか思っていない。世間では人間そしてその精神は崇高であり、素晴らしいものだといって、人間教をまだもてはやしているが、ヒューマニズムなんて便宜的に造られた思想にしかすぎない。人々はそれに踊らされ、政治を含む上部構造の業界に利用されているのだ。テレビのコマーシャルが良い例じゃないですか。ハッピイ!ハッピイ!幸せライフなんていつも騒いでいる。もういい加減にそんな欺瞞は止めろ!って言いたい。こんなふうに考える私にとって(愛)なんて言うのは一つの波動、エネルギーにしかすぎない。善も悪もそんなもんだからこの世には善も悪もない。愛も憎悪もない。こんな考えですからからあなたの期待するような答えはでません、って言ってやった。次の夜、私が帰ってきたら、女は出ていったまま二度と戻らなかった」
「そんなに簡単に割り切れるもんなんですかね。家族愛なんて普遍的なものもあるはずじゃないですか」
「そんなものも造られた意識、虚像ですよ。戦争中、特攻隊員は死ぬ事が名誉なことだと信じ込まされていたけど、戦後になると死ぬ事が怖くなった。国家によって造られた意識、虚像、そんなもんですよ。・・こんな私の人生も結局はそれと同じく、自作自演の人生だっ
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