気になってな。画像をみつめることによって主宰者と波動を共振させ、合体に近づくことができる」
彼は携帯電話の画像をわたしに向けた。
七色を重ねたモザイク模様だった。細かい菱形の粒は中心に向かって収斂され、明るく、万華鏡を思わせた。見詰めていると、引き込まれるというより、自己の意識と同調されていく。モザイク模様は少しずつ色を変化させ、気持ちを楽にし、意識の中にとけ込んでいく。現実感が遠ざかっていく。
わたしは自己の意識に異変を覚え、画像を彼の方に戻した。
「主宰者はどんな人ですか?」
「インターネットの上でしか知らん。ただ、この画像を見ていると、落ちついて来るし、救われる気がする。このサイトのアクセス数は伸びとる」
「新興宗教じゃないんですか?」
「科学と宗教、思想、芸術もすべてを一つにするって言いよる。十分も見詰めていると魂が抜け出てしまったみたいに自分をすっかり忘れてしまう。何とも言えん気分になってしまう」
「麻薬みたいなもんですね」
わたしは言って、突然、穂高のことが思い浮かんできた。
石川はため息をつき、窓の外に顔を向けた。
「あんたは仕事があるけ、良いな。トラックの運転手の仕事をしよった時はこんな仕事は早うやめたいち思いよったけど、やめてしもうたらこんな生活になってしもうて」
窓外には孟宗竹の幹が並び、暗い空気がある。
物音一つしない静かさである。
第三章
穂高の家に寄るのは楽しみの一つである。
十五年間、集金に通い、世間話など交えるうちにお互いの考えが共通し、討議を重ねることで進化していくことが分かった。わたし自身、いや彼自身の身の上話だって分析され、学術的できれいな素材としてしあげられる。(すべての人間表現は芸術である)、というの
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