「待機場所に着いた!錨を降ろします!」

 船長は振り向いて言った。
 「わかった!」
 穂高は言い、リュックサックを担いで立ち上がった。。
 ダミーもそれに続いた。
 「ライトで信号を送ります!」
 船長は言った。
 「ミナイクヨ、だな?」
 「そうです」
 船長はライトの点滅を開始した。
 わたし達は甲板に出た。
 何一つ見えない闇の中だった。
 風がないのに、大気が圧迫してくる。
 頬が凍てつき、体中が硬直していく。
 闇に目を凝らした。
 何も見えない。
 音も聞こえない。
 強烈な明かりが起こった。四方から一斉に襲い、目が眩んだ。
 周りに見えたのは軍事挺の黒い姿だった。
 「ミナイクヨ!」
 ダミーは何度も叫び、私達も叫び続けた。
 返事はなく、照明灯に包囲されたままだ。
 黒い波頭が照らされ硬い面を見せて、大きなうねりを繰り返している。
 反射した明かりが軍事挺の厳つい船腹の一部を照らしている。
 低いエンジン音が四方から伝わってくる。
 人間の声は返ってこない。
 乾いた速射音が起こった。
 「危ない!」
 ダミーが叫び、
 わたし達は体を寄せ合った。

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